ヴァン・ヘイレンの超クールなレア曲20選

『クロッシング・オーヴァー』
ヴァン・ヘイレンのディスコグラフィで最も暗くエモーショナルな魂の歌は、83年にエディ・ヴァン・ヘイレンの親友が自殺した後に書かれた。この哀悼の曲は、93年にヴァン・ヘイレンのマネージャー、エド・レフラーの死後発掘され、再び日の目を見ることとなった。95年のアルバム『バランス』の日本版ボーナストラックとしてリリースされ、アメリカではCDシングル「キャント・ストップ・ラヴィン・ユー」のB面としてリリースされた(ご記憶だろうか)。「クロッシング・オーヴァー」は、10年前に録音されたオリジナルデモに新たに演奏とヴォーカルを重ねたもの。耳のいいリスナーには、歌詞を歌うサミー・ヘイガーの力強いヴォーカルの後ろにエディのデモヴォーカルが聞こえるだろう。

『アトミック・パンク』
ヴァン・ヘイレン唯一のディストピアSFの世界への進出は顕著な成功を収めた。アルバム『炎の導火線』に収録されているこの盛り上がり曲で、デイヴィッド・リー・ロスはいつもの愛想のいいヴォーカルスタイルを封印し、「科学の世界の犠牲者」で「下界」の支配者である終末世界のギャングのボスになりきっている。曲のムードを損なうことなく、イントロで荒地に宇宙船が着陸するような音をギターで表現し得たのはエディの力量だ(彼は、ギターをフェイザーペダルに繋げて手のひらを弦にこすりつけてその音を出している)。

『ビッグ・バッド・ビル』
24年のミルトン・エイジャーとジャック・イェレンの曲をカヴァーしようとデイヴィッド・リー・ロスがバンドに働きかけ、83年のアルバム『ダイヴァー・ダウン』のデモで時代に忠実な演奏を見事に再現した。アレックス・ヴァン・ヘイレンはブラシでスゥイングし、マイケル・アンソニーはアコースティックベースを低く構え、エディはホロウボディのジャズギターを弾き、曲の目まぐるしいコードチェンジを事もなげにナビゲートしている。大抵のロックギタリストにはとても真似できない芸当だ。しかし、ヴァン・ヘイレンの歴史において本作のレコーディングが本当に特別な瞬間である理由は、アレックスとエディの父親でありプロミュージシャンのジャン・ヴァン・ヘイレンがクラリネットを吹いていることにある。ジャンはこのレコーディングの数年後に亡くなっている。

Translation by Naoko Nozawa

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