ビートルズが楽器を交換した名曲10選

『テル・ミー・ホワット・ユー・シー』


マッカートニーが彼の伝記『メニー・イヤーズ・フロム・ナウ』で、「埋め草」で「悲惨なほど記憶に残らない」と書いた『ヘルプ!』の捨て曲である『テル・ミー・ホワット・ユー・シー』は、ビートルズの倦怠期のピークに達していたことを端的に捉えた作品だ。しかし、一方でこの曲もまた新しい領域の楽器に興味を向けた彼らの好奇心を示す事例となっている。元々マッカートニーが書いたこのトラックは、完成までにはしばらくの時間を要している。最初のヴァースのヴォーカルは、ビートに乗れずにぎこちなく、荒れ気味の低いノートのコーラスへと展開してゆく。だが、オーバーダブによるマッカートニーのブルージーなエレクトリック・ピアノ、ギロの擦れる音とクラベスのカチャカチャが奏でるラテン風のパーカッションは、後の『ラバー・ソウル』におけるカラフルな展開を予感させるものになっている。

『ヒア・カムズ・ザ・サン』


60年代後半には、偉大なファブ・フォーの幻影には陰りが差してきていた。レノン=マッカートニーのクレジットは意味のない形式的手続きとなり、4人が揃って同じスタジオをうろつくこともまれになっていった。クリエイティブな個性も衝突し続けたため、自分の曲は自分で陣頭指揮を取り、担当以外の楽器でレコーディングすることも多くなった。

その良い例が『アビイ・ロード』に収録されているハリスンのララバイ『ヒア・カムズ・ザ・サン』だ。ハリスンがエリック・クラプトンの家の庭で書いた楽観的なマントラである。ハイカポのアコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、ハーモニウム、モーグのシンセサイザー音など、ハリスンはセッションを支配した。負傷したレノンは、自動車事故から回復しても手伝っていない。しかし、当時のレノンのビートルズ全体に対する無関心を考えると、おそらく彼は気にしてはいなかっただろう。

Translation by Kise Imai

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