ボブ・ディランの巨大な60年代ブートレッグ・シリーズの内側

Photo: (Michael Ochs Archives/Getty)


中でも「ジョアンナのヴィジョン」はほとんど別の曲になっており(「役に立たないやら何やらで」のところが、「役に立たないやら小さいやら」と、歌詞まで変えられている)、リリースされたバージョンが静かな曲であるのに対し、ロック版でははしゃいで大騒ぎしているのだ。さらに伺えることは、『追憶のハイウェイ61』のスタジオ録音を、ディランがものすごく楽しんでいるということだ。「シッティング・オン・ア・バーブド・ワイヤー・フェンス」のあるバージョンでは、ギタリストのマイケル・ブルームフィールドにアドリブでエールを送ってみたり、タイトルトラックに警察官のホイッスル音を乗せようとして、収拾がつかないほど大爆笑したりしているのである。



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『ザ・カッティング・エッジ』は6CDセット版と2CDセット版のほか、3枚のアルバム全曲の全テイクを含む限定版18枚組でも発売される。ここで明らかになる製作過程それ自体が、1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルにポール・バターフィールド・ブルース・バンドと出演した際の、ディランのエレキギター転向劇と同様にドラマティックなものとなっている。ディランに近い情報筋は、「多くの人は気がついていないのだろうけれど、ディランは大きなリスクを取ったんだ」と語る。「だって、本来なら大観衆をわざわざ遠ざけるようなリスクを取る必要などないんだ。それにしても見事なクリエイティヴィティの爆発だった。彼はいろいろな場所で演奏をしたが、二度として同じような演奏を行ったことはなかったんだからね」。

「ライク・ア・ローリング・ストーン」のセッションだけでもCD丸1枚分あり、エポックメイキングなこの曲が、つまらないサウンドのワルツから、世界を揺るがすロックの大ヒットへと変貌していく2日間にわたる紆余曲折をたどることができる。評論家でディラン研究家のグリール・マーカスは「聴いていると迷子になってしまうだろう」と語っている。

Translation by Kuniaki Takahashi

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