70年代のデヴィッド・ボウイを撮った男:ミック・ロックが語るジギー・スターダストとの日々

あなたのカメラの前にいるときのデヴィッドはとてもくつろいでいるように見えます。間違いなく心地よさそうに見えます。間違いなく彼のカリスマを示していますね。

当時の彼はまだそこまでセレブリティではなかった。彼は明らかに僕を信頼してくれていた。彼はいろいろな要素を混ぜ合わせていた。だから例えばマーク・ボランよりも面白い人間だったんだ。デヴィッドは眉を剃り落とし、ヘアスタイルも髪の色もワイルドで、すごい衣装を着ていた。彼と一緒に過ごし、こういう写真を撮影できたのはなんという特権だったんだろうと気がついたよ。

1972年に撮った一枚の写真には、ハドン・ホールで鏡を見つめるデヴィッドの姿を写しています。この瞬間の彼はとても平穏で落ち着いているように見えますね。

彼はこのときスターではなかった。でも彼には自分がスターであることがわかっていた。改めて言うと、この頃の彼はその後着ていたような衣装はまったく身につけていなかった。それでも僕は彼のカリスマを感じたし、その必然性を感じた。そしてもちろん彼を信じていたし、時が経つにつれて多くの人も同じように信じていた。僕の直感がどこから来たか? 僕にはわからない。多分僕はぼーっとなっていたんだろうね。ルーやイギーに対して反応していたのと同じように。


photo by Mick Rock

この本に収められた多くの印象的な写真の中に、1972年のオックスフォード・タウン・ホールのステージでバンドメンバーのミック・ロンソンのギターをかじろうとしているデヴィッドを写したものがあります。一見、デヴィッドがミック・ロンソンにオーラルセックスをしようとしているようにも見えます。

これはシングルの「スターマン」からやっていた、彼らのやらせだよ。そして『トップ・オブ・ザ・ポップ』に出演したときのエピソードもある。彼らは仲よさそうに振る舞い、これをやって見せ、デヴィッドはミックの肩を抱き寄せたんだ。ものすごく大きな反響があったよ。『ジギー・スターダスト』がリリースされて1日か2日の間に、千人の人が—そのときの彼の観客数としては最大だった—がオックスフォード・タウン・ホールに集まったんだ。僕はたまたまそこに居合わせた。許可されていたから、僕はステージの正面からコンサートを撮影した。僕はそばに近寄ったけれど、デヴィッドは僕に何も注意しなかったんだ。

その後、僕たちが『Moonage Daydream』を一緒に作っているときに彼はこう言ったんだ。“僕は彼にオーラルセックスをしようとしたわけではないよ”って。実際、その写真を見れば彼が跪いていないのがわかるはずだ。脚を広げているだけだ。デヴィッドはこう言っていたよ。“ミックのギターをかじろうとしていただけだ”って。

僕はステージから戻ってきた彼が「撮った? ちゃんと撮ったかい?」と言っていたのを覚えている。僕は「撮ったと思う。自信はないけれど」と答えた。一瞬の出来事だったんだ。翌朝起きてフィルムを現像して、そのショットを見て写真に引き伸ばした。そしてそれをデヴィッドと彼のマネージャーに渡したんだ。彼らはとても興奮していたよ。これには、自分のギターを燃やしているジミー・ヘンドリックスやギターを壊すピート・タウンゼントと同じくらい衝撃的な価値がある。でもそれは明らかに、これに面白い意味合いを与える時代だったからだ。当時はゲイにまつわることはまだショッキングだった。でもデヴィッドをうまく策略に使い、もちろんそれによって衝撃的な価値を作り上げられたんだ。これは、それまでに誰も見たことがないような画像だった。


1972年7月16日、左からデヴィッド・ボウイ、イギー・ポップ、ルー・リード(photo by Mick Rock)

1972年にロンドンのドーチェスターホテルで撮った、有名なデヴィッドとイギー・ポップ、ルー・リードのスリーショットの別の一枚も収録されていますね。

この写真は以前にも公開されている。でもこの写真は—これはとても有名な瞬間ではあるけれど—背景がちょっと違うんだ。背後にマネージャーがいないんだよ。だからこれはあの有名な写真とは別だ。明らかにとても似た一枚ではあるけれど、マネージャーがいない。何か細部が違う写真を入れたかったんだ。

Translation by Yoko Nagasaka

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