ジョニー・デップ、アリス・クーパー率いる世界最強のカヴァーバンド「ハリウッド・ヴァンパイアーズ」とは

「音楽は感情への近道」だと語るジョニー・デップ。ジョー・ペリー、ダフ・マッケイガンとともに。 photo:Ross Halfin


死んでしまった友人たちを思い出す作業は、悲しみを喚起するのではないかと思ったが、クーパーはそんな感傷を一笑に付した。「彼らはもう歴史上の人物なんだよ」そうクーパーは言う。「たとえばジョン・レノンは、かつて自分が一緒に酒を飲んだ男というよりも、エイブラハム・リンカーンに近い。もはやそういう悲しみは乗り越えているし、いつも『こんな時、ジョンだったらどうするだろう』と考える対象になっているんだ」


アリス・クーパーは、ハリウッド・ヴァンパイアーズでカヴァーした、かつての友人であり故人となったロックスターたちを「歴史上の人物」と表現する。 photo:Ross Halfi

一方のデップは、クラシックロック界の宝くじを当てたような心境でいるに違いない。デップにとって、音楽は何より大切な存在だ。最初に稼いだ600ドルは、75年製テレキャスターに消えた。そのギターは盗まれてしまったが、デップは俳優業を始める前からバンドとして活動していた。つらい時期を、クーパーのアルバム『悪夢へようこそ』に助けられたこともあったという。「演技にも、音楽に対するのと同じアプローチを取っている。要は、あらかじめ計画されていない偶然を生かすということ。音楽は、何よりも感情への近道だからね」。「毒の棒」と称する煙草をふかしながら、デップはバンドの一員であることのほうが、たとえば大ヒットシリーズに主演することよりも楽しいと明かす。ギタリストとしても、ペリーが促さなければ、なかなかステージの前に出てこないぐらいなのだ。

デップはすでに一度ならず夢のような体験をしている。デップの友人でもあるポール・マッカートニーがスタジオに来た時は、マッカートニーがバッドフィンガーに提供した69年の楽曲「カム・アンド・ゲット・イット」を一緒にプレイした。そのレコーディングの最中、デップはずっと「信じられない」といった面持ちでペリーを見つめ、ペリーはニヤリと笑って返した。

最後にメンバーに聞いてみた。皆だいぶ年を取ったことだし、今後予定されているライブのために、何か健康維持に努めたりはするのかと。ペリーは、大っぴらにはしていないが実は健康食品ジャンキーなのだと明かした。一方、クーパーは昔と変わらぬ悪魔的な笑みを浮かべて言った。「俺? ホワイトキャッスルのバーガーを食べるよ」

そろそろリハーサルを再開する時間だ。デップはこの後飛行機で移動しなければならない。ハリウッド・ヴァンパイアーズが「マイ・ジェネレーション」の演奏を始めた。ほんの一瞬だが、世界一有名なカヴァーバンドが、世界で最もカヴァーされている楽曲に再び若さを与えたような気がした。


From The RollingStone(US) Archives Issue 1245: October 8, 2015

Translation by Mari Kiyomiya

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