9位 フローティング・ポインツ『エレーニア』


フォー・テットやカリブーとも親交が深く、また大学での博士課程と並行して音楽を制作していたというこのイギリス人プロデューサーのデビュー・アルバムは、プログレッシヴ・コズミック・ジャズと呼ぶべき、壮大な作品となった。デリケートなシンセと浮遊感漂うアンビエント・サウンドを基調にしつつも、70年代のフュージョンを思わせるエレピ・サウンドをはじめ、『エレーニア』にはプロデューサーの多様な音楽的バックグラウンドが見事に反映されている。過去に発表したフロア向けのシングルの数々とは異なり、このアルバムで描かれる親密な音空間は、ヘッドフォンで再生されて初めてその真価を発揮する。(A. Battaglia)


8位 ルードボーイズ『デイズド・デジタル・Ggom ミックス』

Courtesy of Rudeboyz

今年最もエキサイティングだったダンス・ミュージックのマイクロ・ジャンルのひとつは、南アフリカのダーバンで誕生した。10代の少年たちが尋常でないペースでアップし続ける数々のユニークな音楽は、携帯のスピーカーやタクシーのカーステレオから爆音で流され、ロンドンの耳の早いリスナーたちを虜にしてみせた。ダークでありながらもファンキーなGgomのユニークなサウンドは、南アフリカ産のエレクトロ・ポップ、ダブステップを思わせるベース、ダークなシンセ音、そして不安定なインターネット回線に端を発するローファイなサウンドを特徴とする。『Gqom Oh!: The Sound Of Durban』がリリースされる来年1月までは、デイズド・アンド・コンフューズド誌に提供されたこの10曲のミックスが、彼らの唯一の音源となる。2013年に大きな話題となった、トーキング・ドラムとフィル・コリンズの『イン・ジ・エアー・トゥナイト』をミックスしたような『ミツビシ・ソング』もここで聴くことができる。(C.W.)


7位 ザ・ケミカル・ブラザーズ『ボーン・イン・ザ・エコーズ』


デビュー・アルバム『さらばダスト惑星』のリリースから20年が経った今でも、トム・ローランズとエド・シモンズの「未来の音」としてのブレイクビーツを探求する姿勢は変わっていない。8作目となる今作でも、至福と恐怖、喜びの瞬間と後悔の念など、その飽くなき探究心が生み出すいくつもの矛盾に正面から向き合う姿勢も健在だ。冒頭曲『サムタイムス・アイ・フィール・ソー・ディザーテッド』のように、EDMさながらに他人とのつながりを願う気持ちを切実に訴えるものもあれば、『リフレクション』に代表される、ミラーボールに光と影を同時に投影するような、
彼らのシグネチャー・サウンドと呼ぶべきフロア・バンガーもある。不穏なムードを漂わせるセント・ヴィンセントのアニー・クラークやケイト・ル・ボンをフィーチャリングしたトラック、穏やかでありつつも壮大なシンセが鳴り響く『レディエイト』、そしてベックを迎えた哀愁漂う『ワイド・オープン』(皮肉にも、曲中で彼は「僕はそいつを失いつつある」と歌う)など、2人の音楽に対するオープン・マインドな姿勢は今作でも変わっていない。かつてブロックを粉々にした獰猛なエコーは、今なおリスナーの鋭敏な感情に訴える。(C.A.)

Translation by Masaaki Yoshida

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