Illustration by Ryan Casey

イギリスのベース・ミュージック、南アフリカのシャンガーン・エレクトロ、シカゴと日本のフットワーク、ハンブルグのハウス、そしてそのすべてを飲み込もうとしたジャック・Üなど、今年もエレクトロニック・ミュージックの世界では数多くの名盤が誕生した。その中でも特筆すべき20枚を以下で紹介する。


20位 ホーリー・ハーンドン『プラットフォーム』


多様なグリッチ音とミニマリズムが織りなす『プラットフォーム」で、ホーリー・ハーンドンは様々な機械音と自身の歌声を同種の素材として扱い、ラップトップが楽器となりうることを証明してみせた。現代を生きる人々にとって身近なサウンドの数々が、ときに暗く、ときに魅惑的に鳴り響く。ここに収録された10曲は、人間とテクノロジーの新たな関係を模索するものだ。アルバムのハイライトのひとつである『ロンリー・アット・ザ・トップ』では、ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response: ある種の音によって快楽を得る現象)を、まるで自身の体の一部だと言わんばかりに自在に操ってみせる。(B.S.)


19位 ヘレナ・ハフ『ディスクリート・デザイアーズ』


アグレッシブなサウンドに満ちたドイツ人プロデューサーのデビュー・アルバムは、まるでテクノの教科書のような作品だ。(彼女は英FACT誌のインタビューで「社会を崩壊させたい」と語っている)ヴィンテージシンセとドラムマシンのサウンド、原始的なプログラミングに基づいたビートのパターンは、まだ人類が機械にある種の恐怖感を抱いていた80~90年代を思い起こさせる。しかし同時に、渦巻くようなビートと数小節ごとに形を変える変幻自在なアプローチはフューチャリスティックでもある。ダンス・ミュージックの過去と現在をつなぐようなアルバムだ。(A. Battaglia)

Translation by Masaaki Yoshida

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