ミック・ジャガーとマーティン・スコセッシ:70年代の音楽業界を描くテレビドラマシリーズを制作

スコセッシのドラマだけあって、セックス、ドラッグ、病的な暴力シーンには事欠かない。スイング・クラブ好きで、精神が病んだラジオ局重役を演じるアンドリュー・ダイス・クレイはとくにはまり役だ。全編に流れるデカダンスと共に、ドールズといった本物のバンドの音楽も、ドラマ設定の中でふんだんに使われている(パイロット版ではドールズの啓示のようなギグを見ることができる)。回想シーンでも、カナヴェイルの演じるキャラクターがミュージック・ビジネスにかかわりだした頃に大好きだった、さまざまなブルースやR&Bのミュージシャンが登場する。

もっとも、『Vinyl』の最大のスターといえば、70年代のニューヨークのストリートなのかも知れない。「ひどく酔っ払った場所だったよ」とジャガーは振り返る。「この環境がいいんだ。この作品はずっと前から、ここを舞台にすることを待っていたんだ」。ジャガーもスコセッシも、ニューヨークを描いたのはこれが初めてではないが、この時代の不品行ぶりを思えば、ディテールを正確に思い出すことは簡単な作業ではない。ジャガーは語っている。「やはりリサーチはしないといけない。リサーチをすると、記憶に色がつき始めるんだ」。ちなみに、ジャガーはかつて「シャタード」で、「ビッグアップルではポリ袋を着た人が交通整理をしている」と歌っていたが、実際にそんな人を見たことがあるのだろうか。彼は笑いながら答えてくれた「もちろんだよ!」


Translation by Kuniaki Takahashi

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