ザ・シークレット・ヒストリー・ヴォリューム1

 1992年、ペイヴメントがデビュー作『スランティッド・アンド・エンチャンティッド』をリリースして約四半世紀経ったが、いまだ同アルバムは、ほぼ間違いなくインディロック史における最も優れた作品だ。見事なギターのノイズと魅力的なメロディ、シンガー兼ギタリストであるスティーヴン・マルクマスのロマンティシズムに彩られ、無造作ながらも至高の域にまで達した逸品と言える。当時の彼らは全速力で活動し、数多くのシングルやEPなどで貪欲なファンたちを満足させていた。今回のレア音源集はヴァイナル盤のみでのリリースとなるが、彼らの楽曲にとってはまさにうってつけの形式だ。本作から秀逸な10曲を集めれば、それだけで卓越した一枚のアルバムとなり得るだろう。例えば「Sue Me Jack」で幕開けし、「Greenlander」や「So Stark (You're a Skyscraper)」のような気だるくもゴージャスな楽曲に流れ込み、最後はマルクマスが“ハンターが電話で俺に‘ファーストEPほどは良くない’って言ってきた”と歌う「Secret Knowledge Of Backroads (Peel Session 1)」で、盛り上がりつつも寂しさを持って幕切れというのはどうか。

 本作には、92年の熱狂的なライヴも収録。当時はミステリアスな存在だったため、その前評判も誇大広告にすぎないと思われていた彼ら。しかし、ライヴでは自らの実力を証明。結果、90年代の長きにわたって楽しまれる音楽を作り続けてきた。現在でもそのサウンドは楽園のようだ。古臭さは感じられない。主な理由は、現代のバンドの多くがいまだ彼らの影響を受けているからだろう。

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