井手健介と母船

　映画館で働きながら音楽活動を続けてきたシンガー・ソングライター、井手健介のデビュー作。レギュラーのバンドメンバーに加え、石橋英子、柴田聡子、須藤俊明らをゲストに迎えて、美しいメロディで綴られた幻想的な歌を聴かせてくれる。フルートやスティールギター、ボンゴなど多彩な音色を織り交ぜて繊細にアレンジされたサウンドに、静かに溶け込んでいく井手の中性的な歌声。そして、どこかノスタルジックで文学的な歌詞が異世界へと誘う。森は生きているに通じるような、サイケデリックでロマンティックなアルバムだ。