『リラプス』に宿るパワーは、真の攻撃ターゲットをエミネム自身に狙い定めたことから生まれた。ドクター・ドレーにローエンド・ファンク風プロダクションを委ね、彼が今まさに抱えている問題をライムすることにより、長い時間を経て、誰もが予想し得なかったような苦痛に満ち、誠実で、きわめて重要な作品が完成した。本作には多くの憎悪が詰まっている。エミネムは、ドラッグ中毒だった頃よりは少しだけマシだが、まともになった自分自身のことを嫌っている。有名になってしまった自分、母親を嫌っている自分、新作を完成するのに時間がかかってしまった自分をも憎んでいる(あるスキットで、彼の古くからの天敵、スティーヴ・バーマンが、彼をこう嘲る。“音楽業界が駄目になっていく5年もの間、お前はデトロイトに隠れてた/お前がいない間、お前のせいで何人が失業したのか知ってるのか?”)。そうしたすべての負のエネルギーが、クスリの誘惑に抵抗する力を彼に与えた。もしエミネムが嫌いだとしても、彼は我々を責めたりはしないだろう。だが、本作での彼の健在ぶりは、喜ばしい限りだ。

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