スティッキー・フィンガーズ デラックス・エディション

 ザ・ローリング・ストーンズの70年代初のスタジオアルバムは、混乱を極めた1969年に別れを告げた作品だった。その年の彼らには、ブライアン・ジョーンズの死やオルタモントの悲劇、『レット・イット・ブリード』の制作にミック・テイラーが途中参加するといった、さまざまな出来事があった。  1年以上かけてレコーディングされた『スティッキー・フィンガーズ』は、彼らが成熟を深めつつある時期の作品で、『メイン・ストリートのならず者』リリース前の“落ち着きと洗練”を兼ね備えている。ミック・ジャガーとキース・リチャーズが「スウェイ」や「ムーンライト・マイル」といった楽曲で深く自己を見つめる一方、テイラーの情熱的なトーンは「ビッチ」や「ブラウン・シュガー」といった楽曲で完全に溶け込んでいた。

 このリイシューに収録されているオルタネイトテイクからわかるのは、いかにストーンズが自然な音作りをしようとしていたかだ。「デッド・フラワーズ」はフォークロック寄りで、まだカントリーというには十分ではない。「キャント・ユー・ヒア・ミー・ノッキング」も疾走感が途中で失速してしまう。

 本作で最も貴重なのは、「ブラウン・シュガー」のアウトテイクだ。70年12月にレコーディングされたもので、サイドギターにエリック・クラプトンを迎え、野性味ある曲となっている。リチャーズは一時シングルとしてこのバージョンをリリースしようとしていたが、分別ある判断が下された。我々が先に聴いたバージョンは、緊張感があり、アルバムのオープニングとしてはまさに完璧なものだった。

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