ザ・ディザイアード・エフェクト

“僕らは人間なのか、それともダンサーなのか?”、ブランドン・フラワーズはかつてザ・キラーズでこう問いかけていた。しかし、彼の素晴らしい最新ソロアルバムが証明するように、彼はダンサーである時に最も人間らしくなるようだ。この『ザ・ディザイアード・エフェクト』は、ザ・キラーズが2008年にリリースした『デイ&エイジ』以来の最高傑作。『デイ&エイジ』同様、シンセサイザーを多用したディスコサウンドに満ち満ちている。

 スカイ・フェレイラやハイムのアルバムをプロデュースしたアリエル・レヒトシェイドも後押ししている本作。「アイ・キャン・チェンジ」はブロンスキー・ビートによる1984年のクラブクラシック「スモールタウン・ボーイ」をサンプリングした楽曲。ペット・ショップ・ボーイズのニール・テナントがカメオ出演した、やけっぱちな恋を歌った曲だ。

 いうまでもなくフラワーズは、本作でも彼独特のメタファーを惜しみなく披露する。“僕は上空にあるヴェルヴェットの金鉱にいる/君が僕の足を地上に引き戻してくれるまで”(ブランドン君、厳密にいえば金鉱というものは地下にあるものだ。例えそれがヴェルヴェットであったとしても)。「ネヴァー・ゲット・ユー・ライト」や「ディギング・アップ・ザ・ハート」といった楽曲では、生まれながらに迷子でくすんだ金髪をした“ラスベガスのギャルたち”について大げさに感情表現するフラワーズ。これらの楽曲は、ELOの不当にも忘れ去られたロカビリー時代を思い起こさせる。総まとめすると、『ザ・ディザイアード・エフェクト』は稀有な作品だ。近年活躍するロックスターによって作られた最高のストレートなポップアルバムと言える。

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