スヌープ・ドッグの13作目となる本作は、ケンドリック・ラマーの傑作『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』のB面とでもいうべき作品。ラマーがファンクを使用してコンプトン出身者の奮闘をドラマ化したのに対し、ドッグは本作でリズム感溢れるグルーヴを使用し、ロサンゼルスを煙でかすんだ、セクシーかつ日当たりの良い“不思議な国”として描いている。唯一無二の存在であるスヌープは、レゲエアーティスト“スヌープ・ライオン”としてジャマイカに少々寄り道した後、再び故郷に戻ってきた。そしてファレル・ウィリアムスと再びタッグを組み、70年代のヴァイブを深く掘り下げた。

 本作は、昔懐かしい思い出も逍遥する。オープニング「カリフォルニア・ロール」は、以前ファレルをフィーチャーした「ドロップ・イット・ライク・イッツ・ホット」のようなベースラインが印象的な楽曲。スティーヴィー・ワンダーやチャーリー・ウィルソンのようなヒーローたちがアルバムに参加した結果、本作はスヌープとファレルが大好きな年代を彷彿させるものとなった。実は、スティーヴィー、ウィルソンともに、スヌープとはなじみがあった。ウィルソンは2004年の「サインズ」でフィーチャーされ、スティーヴィーは2006年の「カンヴァセーションズ」でサンプリングされている。本作ではそんなふたりが、巧みに楽曲のミックスに組み込まれ、単にクレジットに載るだけの大物という存在ではなくなっている。

 彼の長所は少々間が抜けたところにある。“俺は単なるリス、ナッツを見つけようとしてるだけなのさ”と歌うスヌープ。20年以上ものキャリアを誇るラッパーだが、同じくらいの経歴のラッパーたちよりもよほどのんびりしているようだ。

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