スクリレックス・アンド・ディプロ・プレゼント・ジャック Ü

 スクリレックスとディプロが初めてアルバムを共作した。彼らの目的はひとつだ。それは、聴く者が思わず体を揺り動かしてしまう作品にすること。とても単純な目標ではあるが、結果として、近年リリースされたどんなダンスミュージックにも負けず劣らず進歩的かつ端正な作品となった。収録された曲のほとんどは聴き慣れた出だしで始まるものの、すぐに新たな局面、少なくとも新たな強さを感じさせる展開が待っている。前半のハイライト「ビーツ・ノッキン」は、鞭打ちでも起こしそうなテンポが熱狂的なニューオリンズバウンス(ディプロの「Express Yourself」を彷彿させる)へと変化。またトリニダード島のスター、ブンジ・ガーリンをフィーチャーした「ジャングル・バァエ」は、ディプロのプロジェクト、メジャー・レイザーの“カーニバル向きソカ&EDMのハイブリッド”をさらに激しくしたような曲となった。

 ダブステップがピークの頃のスクリレックスなら、コンピュータで作ったノイズの嵐が楽曲の中に吹き荒れていただろう。しかし本作の彼とディプロはその逆を行く。「ジャングル・バァエ」や「ファブリーズ」、シングルの「テイク・ユー・ゼアー」では、まばらなベース音がブラックホールのような役割を果たし、音と音の隙間ができることで曲全体に変化が生まれている。「ホウェア・アー・ユー・ナウ」でのジャスティン・ビーバーはふたりに引けを取らないパフォーマンスを披露しているが、彼ほどに知られていないゲストたちは落ち着きないドラムと跳ね飛び回るシンセに時折埋もれてしまっている。しかしリスナーにとっては、こういった楽曲に没頭することも楽しみの半分なのだ。

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