フィジカル・グラフィティ デラックス・エディション

「テン・イヤーズ・ゴーン」で、“変化に満ちた人生だ”と歌うロバート・プラント。それはまさに言い得て妙だ。デルタやメンフィスのブルースを基礎とし、サイケデリックミュージックやウェールズ地方のロマンティシズムなどを加味したレッド・ツェッペリンの音楽は、1975年リリースの2枚組アルバム『フィジカル・グラフィティ』でクライマックスを迎えた。本作は、元より豪華な作品だった。74年レコーディングの長編トラック8曲が収録されたこのアルバムは、70年まで遡るアウトテイク数曲で補強された。彼らのルーツやテクスチャーの変化など、さまざまな要素が盛り込まれた結果、バンド史上最も完全な作品となっている。これに続く76年リリースの『プレゼンス』は駆け足でレコーディングされた作品で、79年リリースの『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』は完成された作品とは言い難い。そういう意味でも『フィジカル・グラフィティ』は、自信たっぷりでエネルギッシュな、ツェッペリンの最高傑作といえよう。

 プラントとギタリスト兼プロデューサーのジミー・ペイジは、「カシミール」の壮大な高揚感や「死にかけて」のラーガに影響されたスライドギター演奏などを通じて、インド、モロッコ、エジプトといった国々のイメージを曲へ刻み込んでゆく。ベーシストのジョン・ポール・ジョーンズとドラマーのジョン・ボーナムもアルバム全体に推進力を加える。ジョーンズは「トランプルド・アンダー・フット」でクラビネットを担当し、最高にファンキーなリズムを披露。「カシミール」に共作者として名を連ねるボーナムは、砲撃のように炸裂するドラムでこの曲の幻想的な雰囲気に大きな役割を果たしている。

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