まずはイマジン・ドラゴンズを正しく評価しておこう。2012年のデビュー作『ナイト・ヴィジョンズ』は、細分化された2010年代の音楽界に、古き良きアリーナ・ロックの火を再び灯してくれた。コンサートでは大音量のドラムをフィーチャーし、これは今後、ロックの主流となるかもしれない。

 しかし“ほどほどに独創的”と“素晴らしい”は同義ではない。イマジン・ドラゴンズはこれまで、90年代にクリードがやり尽くしたようなアンセムにさまざまなエネルギーを注ぎ込んできた。『スモーク・アンド・ミラーズ』も前作を踏襲するアルバムといえる。『ナイト・ヴィジョンズ』同様、アレックス・ダ・キッドが共同プロデュース。アルバム全体は激しくジャンルをマッシュアップしたものだ。「サマー」のようにしなやかで愛らしい曲があるかと思えば、「ドリーム」のように寂寥感溢れるゴス曲も収録。ザ・ブラック・キーズふうのガレージ・ブルース「アイム・ソー・ソーリー」などもある。

 中心となるのは、27歳のシンガー、ダン・レイノルズ。成功しても彼の苦しみは相変わらず。“触るものすべてが黄金になると誰を信じていいのかわからない”と「ゴールド」で歌う彼。「イット・カムス・バック・トゥ・ユー」は明るい曲であるにもかかわらず、“自分の持っていた可能性/それはセラピーを受けて知った”と告白する。
“何百万回と嘘をついたけれど、これだけは本当だ”と、ゴスペルをサンプリングした「アイ・ベット・マイ・ライフ~僕の人生をかけて」でレイノルズは歌う。高潔な道を歩もうと必死である彼が、いつか永遠の知恵を授けられることがあるかもしれない。が、そこまで行くにはまだ時間がかかりそうだ。

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