ここ2年でリアノン・ギデンズは最も有望なアメリカン・ルーツ・ミュージックの歌手として注目されるようになった。3人組のストリングス・バンド、キャロライナ・チョコレート・ドロップスのフロントウーマンである彼女。昨年は、マーカス・マムフォードやエルヴィス・コステロとともにボブ・ディランの歌に新たな息吹を与えたザ・ニュー・ベースメント・テープスや、コーエン兄弟の『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』公開に伴って開催された2013年のニューヨークでのコンサートなどで話題をさらった。現在キャロライナ・チョコレート・ドロップスが活動休止中のギデンズは、ソロとしての活動も開始。クラシック音楽の声楽訓練を受けた歌唱力と、オリジナリティあふれるやり方で伝統音楽を蘇らせている。

 Tボーン・バーネットがプロデュースした本作で取り上げられるのは、ニーナ・シモンからドリー・パートン、オデッタといった、アメリカン・ルーツ・ミュージックの偉大なる女性アーティストたち。ギデンスは本作で、ジーシー・ワイリーやエリザベス・コットンといった、フォーク・ソングのヒロインたちの苦悩に満ちた物語も掘り下げてゆく。シスター・ロゼッタ・サープの「アップ・アバブ・マイ・ヘッド」は、洗練されたセッション・ミュージシャンたちにバックアップされた結果、本来この曲が持っていた“燃え上がるような激情”はあまり見られなくなってしまった。しかしながらほとんどの場合は、これらの名曲に、2015年にふさわしい“新鮮さと活力”を与えるのに成功している。パッツィ・クラインの「シーズ・ガット・ユー」のソウルフルなヴァージョンはその好例だ。

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