チャーリーXCX、22歳。ポップスターの地位にのぼる寸前にありながら、オープニング曲で“くたばれ、バカ野郎!”と連呼する彼女には、脱帽せざるを得ない。本名シャルロッテ・エイチスンがいくら生意気だろうが、もう許してやろうではないか。この10年で最も魅力的なポップ(アイコナ・ポップ「アイ・ラヴ・イット」)、同ジャンルにおける最大ヒット(イギー・アゼリア「ファンシー」)をソングライティングし、それぞれにゲスト参加したのだから。

 そんな彼女、本作ではデボラ・ハリーやCBGBに出演したバンドなどを手本としたにちがいない。「ロンドン・クイーン」は、ジョーイ・ラモーンを想起させる一曲。ちなみに曲の中には、“ベースボールバット”も登場する。しかし、決して懐古趣味の作品ではない。チャーリーは、自らの音楽にデジタル技術や携帯電話で使われる仲間言葉なども加え、パンク・ポップを完全に最新化した。現在の音楽シーンでは、パワフルな若い女性アーティストたちが力量を発揮しているが、チャーリーもその一例といえる。

 チャーリーは“大バカソング”と“最高の大バカソング”の違いは、ほんの少しのグルーヴと味付けにあることを心得ている。気の利いたギター・リフと跳ねるようなシンセで、“光りモノ好き”のための曲「ゴールド・コインズ」に錬金術を施し、「ブレイク・ザ・ルールズ」では、ソングタイトルと“I don't want to go to school.(学校に行きたくない)”というフレーズをライミングすることで、見事に飛躍している。こういった感情は、決して錆びることはない。このアルバムに収録された多くの素晴らしい楽曲も同様だ。

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