パンダ・ベア・ミーツ・ザ・グリム・リーパー

USインディの珍獣集団、アニマル・コレクティヴの屋台骨を支えるパンダ・ベアことノア・レノックス。最近はダフト・パンクのヒット曲「ドゥーイン・イット・ライト」にヴォーカリストとしてフィーチャーされたことで話題になったが、3年ぶりのソロ・アルバムが完成した。前作『トムボーイ』に続いて制作パートナーに迎えられたのが、元スペースメン3のソニック・ブーム。前作ではノアがひとりでレコーディングした音源をソニック・ブームがミックスするというアプローチだったが、今回は制作段階からコラボレートしたらしい。曲の骨格が浮かび上がってくるようなミニマムなサウンドが印象的だった前作に比べて、今回はノアらしいサイケデリックな音像とクセのあるメロディ、そして、多彩なビートが渦巻いている。なかでも「Principe Real」は、ダフト・パンクとの共演からの影響を感じさせるダンサブルなナンバーだ。

ソニック・ブームとのセッションは19曲ものデモを生み出し、ノアはそこから13曲をよりすぐって、アルバム全体の流れを生み出していったらしい。アルバム前半のサイケデリックな狂乱をくぐり抜け、チャイコフスキー「くるみ割り人形」のハープのフレーズをサンプリングした「Tropic of Cancer」では、天へ召されたような荘厳な世界が広がる。思えばアルバム・タイトルの“グリム・リーパー”とは、大きな鎌を持った骸骨として描かれる西洋で死を擬人化したキャラクター。“パンダが死神と出会う”というのもシュールなシチュエーションだが、死と再生がアルバムのテーマなのかもしれない。パンダと死神が意気投合して、朝まで飲み明かしたような奇妙な高揚感に満ちたアルバムだ。

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