ベット・ミドラーの今作のように、ガール・グループのカヴァー・アルバムを作るのは相当な挑戦だ。誰もが「あたしのベビー」が大好きなのだから、確実にものにしなければならない。ありがたいことに、ミドラーはどんなポップ・スタンダードも生き返らせるだけの豊かなヴォイスを持っている。見事なザ・シュレルズの「ベイビー・イッツ・ユー」を聴けばそれは明らかで、ミドラーはこの曲をゴスペル調のバラードとして作り直している。もちろん彼女は抜け目なく、新しい曲も収録。TLCの「ウォーターフォールズ」は低音の滑らかな声で歌われ、この90年代のヒット曲も完全に彼女のものとなっている。「愛しているんだもの」は60年代の女王たちのひとり、ダーレン・ラヴとのデュエット。このアルバムのテーマである“女の友情”が、彼女たちのパワフルなハーモニーと、まるでガールズトークをしているような歌い方を通じて感じられる。ミドラーはスプリームス「恋はあせらず」のカントリー&ウェスタン・ヴァージョンなどでさらに挑戦を続けるが、そういった曲では彼女の素晴らしいショーガールの才能をもう少し単刀直入に使ってくれたらと思うかもしれない(カントリー専門のラジオ番組なら、カントリーとみなしてもらえない曲もあるだろう)。しかしその40年にわたるキャリアにおいて、彼女がいまだ新しいものにチャレンジする熱心さを持っていることは尊敬に値する。そうした賭けのほとんどは成功し、特に、シャングリラスの「がっちりキスしよう」のような忘れ去られた名曲に活を入れている時は効果も絶大だ。“さあガールズ、早朝セールに急がなくちゃ”などアドリブにも満ちた、楽しい一枚だ。

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