ニール・ヤングの唯一のスタイルは、自分がしたいことをすること。誰に何を言われようと気にしない。1曲ごと、オーケストラ・アレンジとソロのヴァージョンが収録されたこのアルバムは、(収録楽曲がすべて異なる)一般的なアルバムと同じくらい素晴らしいものだ。しかし、面白さの点では、こちらが圧倒的に優勢。

このアルバムは、ヤング後期の傑作と言える。本作にはプロテスト・ソングから車への思いを歌った曲、そしてなんとラヴソングまでが収録されている。これはおそらく、最近とても親密だという、女優で環境活動家としても有名なダリル・ハンナとの関係から生み出されたのだろう。ラヴソングに関しては、オーケストラ・バージョンのほうがぐっと親密な雰囲気が出ている。「アイム・グラッド・アイ・ファウンド・ユー」などは、ソロ・バージョンだと少しさみしく感じてしまう。ホーン・セクションの入った3曲のうちのひとつで、88年の「ディス・ノーツ・フォー・ユー」を思い起こさせる曲「アイ・ウォント・トゥ・ドライヴ・マイ・カー」は、年季の入ったブルースマンの雰囲気が出ていてとても楽しい。

しかし環境について歌った「フーズ・ゴナ・スタンド・アップ?」での弦楽器の音は、まるで毛皮を着て動物保護団体の集会に行ってしまったかのような居心地の悪さだし、「タンブルウィード」の木管楽器のアレンジは、ウクレレ1本では心に染みるセレナーデだったのが、やたらと大げさに聞こえる。しかしどちらのアレンジにしても、ヤングのいまだ衰えぬ高音の声と、リアルな感情に対してシンプルにアプローチする手法は健在だ。彼はそれだけで十分と言えよう。

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