エモの帝王まで上り詰めたフォール・アウト・ボーイ。彼らはその事実にあまり反応していないようだが、そのトレードマークは今回も健在だ。お約束でもあるサビのシンガロングやギター・リフに乗せて、心の痛みを告白するかのように歌い上げる。本作は“恐怖”というエモーションで幕を開けるのだが、そこで聞こえてくるフレーズは、葬儀場のオルガンのサウンドに乗せたつぶやきのようだ。勢いのある曲で鬱病や薬物依存について歌ったり、彼ら自身のレコード・セールスについて自虐的に触れた歌詞もあったりして、皮肉もたっぷりこめられているのだ。このアルバムでは、今まででもっともロック・スター然としたバンドの姿が見える。音楽的にはいつものポップ・パンクに加えて、プログレやR&Bなど、幅広い要素を取り込んでいる。ジム・クラス・ヒーローズ、リル・ウェイン、エルヴィス・コステロ、デボラ・ハリーなど、新世代から大御所まで、多彩なゲスト・ミュージシャンを集めた1枚。“ジェネレーションY”世代の代表格となった彼らが、あとは音楽史のなかでどんな立ち位置になるのかが興味深い。

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