デビュー10周年を記念して、デス・キャブ・フォー・キューティーのデビュー作が2枚組のデラックス盤で登場。ファンにとって宝物のディスク2には、1998年に行われたシアトルでの初ライヴが収録されている。風変わりで、それでいて美しい出来事がこのライヴ音源で聴ける。この時のステージで、彼らは後に自分たちの代表曲となる「ユア・ブルーズ」を演奏しているのだ。  デビュー作というのは必ずしも出来がいいとは限らないが、ギタリストでありプロデューサーでもあるクリス・ウォラはこの当時スタジオ技術を習得していなかったようだし、ヴォーカリストのベン・ギバードの独特な歌い方も完成度は高くなかった。バンドとしての強烈な個性は今と比べると弱いが、「ベンド・トゥ・スクエア」では、子供が新雪の上をゆっくり歩いていくような、いたずらっぽくて風変わりな雰囲気のチェロの音が愛らしい。アメリカを代表するインディ・ロック・バンドのデビュー作は、その後のエモに通じる精密さがある。

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