『バトル アンド ロマンス』から1年と9カ月。満を持して届けられたセカンド・フル・アルバムである。同名ツアーでアルバムが曲順どおりに披露されたことですでに大きな話題になっているが、“5次元”を謳う今回の作品から受ける印象は、壮大にして重厚。その音楽および構成はドラマチックというよりもドラマそのものになってきている。

アルバムのハイライトは幕開けに訪れる。1曲目の「Neo STARGATE」からまさかの8分越えで、「カルミナ・ブラーナ」なイントロを聴いてすぐに“ああ、これはとても大変そうなアルバムだな”と思いいたった——なにしろ、合唱隊とオーケストラがひとしきり盛り上がった後、本人たちの歌声が登場するのは2分半を過ぎてからである。そこからレイヴィーなブレイクビーツと攻撃的なベースが徐々に顔を出し、やがて合唱隊とメンバーのヴォーカルとともに渾然一体となって大きな物語を描いていく。合唱隊がメインのラインのハモリまで取っているのが仰々しくも面白いし、こういったことがスッとハマるのがももいろクローバーZの凄みだと思う。続いては「仮想ディストピア」。一発目で圧倒され、唖然とさせられた後に、改めて盛り上げてくれる楽しい楽曲。子供コーラス隊とユニゾンするパートが1曲目と3曲目を上手くつないでいる。その3曲目は、このアルバムの起点となったであろうシンフォニック・ロック「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」。初めて聴いた時は、なんて荘厳でメチャクチャな曲なんだと思ったが、「Neo STARGATE」を聴いた後だと、めまぐるしい展開も上手くコンパクトなサイズにまとめられていて、非常にポップな楽曲なんだなと改めて感じ入った。

「5 The POWER」はトラックがMUROとSUIでリリックがいとうせいこうというヒップホップ・チューン。45キング「The 900 Number」を思い起こさせるオールドスクールなネタ使いが素晴らしい。ここからファンキーな「労働讃歌」への流れは極めてスムーズ。“インストだけでも聴ける”とも称された本格的なブラス・ファンクが聴ける。「ゲッダーン!」は流れを変えるキュートなスウィング・ナンバー。ティカ・αことやくしまるえつこが作詞作曲を手掛けた7分に及ぶ「Z女戦争」の世界観とも上手くシンクロしている。

「月と銀紙飛行船」は落ち着いたテンポの三拍子で、メロトロンの音色がアクセントになったメルヘンチックな楽曲。静と動の対比が非常にダイナミックで、ひとつの劇を観ているような感動がある。また、メンバーの歌唱力、表現力が進歩していることがはっきりとわかるのはこの曲ではないだろうか。途中の台詞パートもいい。

「BIRTH Ø BIRTH」はNARASAKIによる作曲で、ブロステップ的な要素も取り入れた攻めのブレイクビーツ曲。特に間奏の荒ぶり方が凄まじい。ももいろクローバーZは4つ打ちの曲が少ないのも評価したいポイント。絶滅危惧種の太陽人が地球にやってくる「上球物語 -Carpe diem-」。言葉の詰め込み方やメロディライン、サビの展開が「Chai Maxx」を彷彿させる楽しい1曲だ。「宙飛ぶ!お座敷列車」はちょっと古風な趣のあるロックンロール。せっかく“上球”したのに、宙を飛んでまた成層圏を突破していってしまう……。

布袋寅泰が手掛けた「サラバ、愛しき悲しみたちよ」で勢いはさらに加速する。それにしても、本作を何度も聴くほど、シングル曲が有効に機能していると思わされるし、シングル曲自体もそれ単体より、よく聴こえる構成になっていると思う。ラストの「灰とダイヤモンド」はアコースティックなミディアム曲。これまでの軌跡とこれからの未来が描かれた詞を、息遣いが聴こえるほど前に出た歌声を通して聴くと、否応なしに感動してしまう。これも7分近い曲だが、この重厚なアルバムを美しく終えるためにはこれくらいの尺と余韻が必要だろう。ラストにふさわしい幕引きである。

ただシングルを集めるのではなく、曲と曲が切り結んで互いが高め合い、アルバムとして形にする必然を強く感じさせる全13曲。本作をもって、ももいろクローバーZは紛れもなくネクストステージに到達した。

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