パードン・マイ・イングリッシュ

ボサノヴァは、58年、エリゼッチ・カルドーゾが発表したアルバム、『カンサォン・ド・アモール・ヂマイス』をもって誕生したと言われている。収録曲をすべてアントニオ・カルロス・ジョビンが作曲、ヴィニシウス・ヂ・モライスが作詞した本作には、ジョアン・ジルベルトがギターで参加した「シェーガ・ヂ・サウダーヂ(想いあふれて)」が収められていて、これが新しい音を求めていた当時の若者たちに熱狂的に受け入れられたのだ。  08年はそれから半世紀という節目の年。記念行事が相次ぐなか、お馴染みの名曲が並ぶ『コンポーザー/ベスト・オブ・アントニオ・カルロス・ジョビン』、ブラジル北東部のバイーア出身の女性コーラス・グループ、クアルテート・エン・シーのアメリカ初進出盤『パードン・マイ・イングリッシュ』(祝・初CD化)と『天使のクァルテット』など、ワーナーからも名盤5枚が再発に。  クアルテート・エン・シーは前出ヴィニシウス・ヂ・モライスとカルロス・リラのバックアップにより64年にデビュー。オリジナル・メンバーは4人姉妹で、全員「cy」で始まる名前を持つことからこのグループ名が付いた。リオで活躍した後、メンバー交代を経て66年にはザ・ガールズ・フロム・バイーア名義で米ワーナーと契約。67年に発表したのがタイトルもキュートな『パードン~』だ。アメリカ人向けに「おお、スザンナ」や「バイ・バイ・ブラックバード」などをカヴァーしつつも、アルバムに収められている多くの曲は、ジョビンやマルコス・ヴァーリなどそうそうたる顔ぶれによる、涼やかなボッサ・ナンバー。  渡米前に必死で練習したという英語が微笑ましく、むしろ少したどたどしい感じが、息のあった可憐なコーラス・ワークと軽やかなスキャットのなかで絶妙な味として生きている。ラウンジ感溢れる豪奢なストリングス&ホーン・アレンジにも気圧されることなく、のびのびと歌い上げていく4人の素敵なこと! 翌年には『天使のクァルテット』を発表、より堂々とした歌声を聴かせている。

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