この騒然とした2枚組のに収録された新曲8曲中の1曲「トゥイステッド・ロード」でヤングは、初めてボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」を耳にした時のことを素晴らしい混喩でこう回想する。“ポエトリーが彼の舌から転げ落ちる/まるでハンク・ウィリアムスがバブルガムを噛んでいるかのように”。そして、ヤングはその時のインパクトが彼に与えた影響を語る。“そのマジックを感じて、家に持ち帰った/捻りを加えて自分のものにした”と、クレイジー・ホースの自信たっぷりのラフなカントリー演奏に乗せて彼は歌う。その時の驚きと彼の夢は、未だに手を伸ばせば届きそうなほど近くにあるかのようだ。

そして、その混乱と彼の落胆も然りだ。『サイケデリック・ピル』は、ヤングが43年間つき合っているガレージ・バンドのクレイジー・ホースと2012年にリリースした2枚目のアルバムとなる。そこには、彼らがこれまでに作った何枚もの素晴らしいアルバムが持つ、かく乱した誠実さと荒々しい活気がある。今作は27分間に及ぶファズ・ボックス・トランス「ドリフティン・バック」で幕開けを飾る。リード・ギターのヤングはフィードバックを吐き出し、ワーミーバーを長い間絞り、そこにリズム・ギタリストのフランク・サンペドロの安定した2コードのサポートとベーシストのビリー・タルボットとドラマーのラルフ・モリーナの歩兵隊のロック・マーチが鳴り重なる。約6分ごとに、ヤングのしゃがれた甲高い声がその混乱を切り裂き、テクノロジー大手企業の欲とMP3のうんざりするサウンドに対する現代の嫌悪を吐き出す。

実際、ヤングのムードは一目瞭然だ。90分近くに及ぶ『サイケデリック・ピル』のほとんどは、怒りに満ちた内容となっている。トゲのあるギター・ジャムと超現実的な憤怒(「ドリフティン・バック」では“俺もヒップホップ風のヘアカットにしよう”と、一見わけのわからないことを言って、彼はあざ笑う。)の長い楽曲となっており、時折心温まる至福が一気に噴出する。それは、妙に感動的なシーソーだ。「サイケデリック・ピル」は「シナモン・ガール」がコーティングされた蛍光色の天使の曲解であり、2ヴァージョンあるうちの最初のヴァージョンで、ジェットエンジンのようにフェーズしていく。しかし、次に来るのは「ラマダ・イン」で、焼け付くようなギターとストレスを抱える愛情の17分間だ。そこでのヤングは、最高の時期が過ぎ、習慣的な日常の義務といったものになってだいぶ経ってからも続いている恋愛を分析する。 「ウォーク・ライク・ア・ジャイアント」で、暗雲のディストーションを通してヤングは告白する。“俺と友人たちは/世界を救うつもりだった……しかし、空模様は変わった……俺は悲嘆にくれる”と。16分にも及ぶこの曲の雷鳴のようなドラムと空咳のようなコードが鳴り響くエンディングは、ヤングの考える廃墟を行進する巨人のようだ。 しかし、真の幕切れは、太陽が輝く無言のサイケデリックな聖歌隊の洗浄のコーダで、それは再生をほのめかす。ヤングは自分がヒッピー最後の生き残りのように感じているかもしれないが、まだ夢は見終わっていないと信じている男のように聴こえるのだ。

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