ナッシング・バット・ザ・ビート

 ブラック・アイド・ピーズの「アイ・ガッタ・フィーリング」のプロダクションで名を上げた、フレンチ・ハウスの立役者デヴィッド・ゲッタ。以降、彼はますますテクノ色の濃くなってきたトップ40で、ガイド役を探すポップ・スターたちが真っ先に訪ねる存在となった。50セントからリアーナまでがそのスタジオのドアを叩いたが、ゲッタ自身はいつでも、他人のレコードに名前がクレジットされる以上の存在になりたがっていたのだ。現在ヒットしている「ホエア・ゼム・ガールズ・アット」のビデオで、彼はロサンゼルスの屋上でDJをし、道行く人たちをパーティ・ピープルに変えている。それはまるで、クスリ漬けになったU2の「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネーム」のようだ。

 あなたがデヴィッド・ゲッタの5作目を聴いて、彼が4つ打ちビートのボノであることに気づかなかったとしたら、それは彼がユーロハウスの爆音とジェット・エンジンのようなシンセを、ヒップホップやR&B、さらにはロックと、いかに自然に絡めているかの証拠だ。ここでのベスト・トラックの数々はまるで勝利の方程式のようで、ラッパーは脈打つ詞を滑らせ、R&Bのスターは、とてつもなく巨大なバラードのコーラスを着飾る。「リトル・バッド・ガール」でリュダクリスが威張り散らせば、タイオ・クルーズはセクシーなクラバーについてささやき、アッシャーがコールドプレイ風のギターに乗せて孤独になれば、ニッキー・ミナージュはクラブをブチ壊す(“アタシの後ろの女ども/フットボールじゃあるまいし/なんでアタシにタックルしてくんのさ”と、彼女は「ホエア・ゼム・ガールズ・アット」でラップしている)。傑作なのはウィル・アイ・アムをフィーチャーした「ナッシング・リアリー・マターズ」で、溢れ出るメロディはあなたの悩みを、逃避主義者たちの連帯感へと変えてしまう。ゲッタとウィル・アイ・アムは実に相性が良いが、それは彼らが人類を結びつけるためにダンスフロアの俗物になるという、ひとつのヴィジョンを分け合っているからだ。

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