追悼チャーリー・ワッツ 誰が何をしようと動じない妥協なき音楽人生

チャーリー・ワッツ(1978年)(Photo by Michael Putland/Getty Images)

ロック界最高のドラムの神様は、スポットライトを嫌った。淡々と自分の仕事をこなす彼は、長年に渡りステージ上から人々を圧倒し続けた。

チャーリー・ワッツのいない世界など想像できない。彼の繰り出すバックビートは、世界中のサウンドを変えた。ザ・ローリング・ストーンズの伝説的なドラマーは、60年近くに渡り、最高の仕事をなし遂げた。チャーリーの神秘的なオーラは、「Let It Bleed」のイントロで聴かせた5秒間のドラムに集約されていると思う。ストーンズの名曲のひとつだが、バンドをリードするのはチャーリーのドラムだ。ミックはチャーリーのリズムに歩調を合わせ、ギターはミックに付いていく。一方のチャーリーは、誰が何をしようと動じない人間だった。彼の妥協しない姿勢が、ストーンズを偉大なバンドにしたのだ。

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他のメンバーは、チャーリーの感情を動かすことなど不可能だとわかっていた。チャーリー自身も自分のプレイに一喜一憂したりすることがなかったのだから、他のメンバーはなおさらだ。キース(リチャーズ)は、1981年のローリングストーン誌のカバーストーリーで語っている。「俺はチャーリー・ワッツがいてくれることに、本当に感謝している。特に一緒にいる時はそう思うよ。彼はああいう人間だから、自分では意識していないけれどね」というキースの証言に、当時のインタビュアーは耳を疑った。しかしキースは、「チャーリーの謙虚さに対して、何かを押し付けることなどできない。全く裏表がないんだ。彼にとっては、自分のドラムがどう評価されているかなんてお構いなしさ」と断言した。

「Start Me Up」が今なおラジオから流れてくる理由のひとつは、チャーリーにある。曲がなかなかフェードアウトせず、ミック(ジャガー)がエンディングで「You made a dead man come!(お前は死人を“いかせた”)」などとひわいな言葉を吐いても誰も気に留めないのは、曲の最後までグルーヴを刻み続けるチャーリーのドラムに皆が耳を奪われているからだ。(ストーンズのいくつかの作品でチャーリーが死人をいかせている、と主張するファンすらいる。)

Translated by Smokva Tokyo

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