マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン再始動、シューゲイザーの伝説を今こそ紐解く

マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(Photo by Paul Rider)

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインがついに新たな動きを見せた。まずは本日3月31日、ストリーミング配信およびダウンロード販売が解禁。そして5月21日には新装盤CD/LPの再発売も決定。伝説的バンドの再始動を記念して、『シューゲイザー・ディスク・ガイド』監修、『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』著者の黒田隆憲に彼らの歩みを総括してもらった。

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マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(以下、MBV)がDominoに移籍し、過去にリリースされた4つの作品『Isn’t Anything』『loveless』『m b v』『ep’s 1988–1991』をリイシューする。ソニーUKとの契約解除により、2019年に突然サブスクリプション・サービスから姿を消した彼らの音源が、再び聴けるようなるのは嬉しい限りだ。なお、2013年にリリースされた彼らの3rdアルバム『m b v』は、今回がサブスク初登場となる。

そこで今回は、1990年代初頭に巻き起こった(本人たちが望む望まないに関わらず)シューゲイザー・ムーヴメントの代表格である男女4人組について、筆者が過去に行ったインタビューや文献からの引用を交えつつ、今一度おさらいをしておこう。


スネイル・メイルがMBVからの影響を語る動画。彼らはシューゲイザーと呼ばれたバンドだけでなく、オアシス、レディオヘッド、シガー・ロス、モグワイ、ディアハンター、ジェイ・ソムに至るまで多大なる影響を与えてきた。

MBVが、いかに革新的なバンドであったかは、1991年にリリースされた彼らの2ndアルバム『loveless』(1991年)に収録された楽曲「to here knows when」を聴けば一目瞭然だ。奈落の底へと落ちていくような深く歪んだギターと、その洪水のようなサウンドスケープに今にも飲み込まれそうな、儚くも美しい女性ヴォーカル。わずかに聴こえるドラムはペラペラでリズムボックスのようだし、ベースに至ってはブブブブ、ゴゴゴゴと地鳴りのようなノイズを撒き散らしているだけのようでもある。

これまでのミックスバランスの常識を、何から何までひっくり返したサウンドスケープ。この『loveless』によって、彼らはロック史上最も影響を与えたバンドの一つとして今なお君臨し続けているのだ。



1983年にアイルランドの首都ダブリンにて、ケヴィン・シールズ(Vo, Gt)とコルム・オコーサク(Dr)を中心に結成されたMBV。当時の彼らはガレージサイケ~ポストパンクを奏でていた。

「86年に自分達のバンド名が、ある映画のタイトルと同じだって初めて知ったんだ。それで映画を観たらもう最悪で(苦笑)。大嫌いな映画と関連づけられるのはまっぴらごめんだからバンド名を変えたかったし、 今でも変えたいと思っているくらいだよ。あの映画とは陰陽の関係みたいで、クズみたいな映画が『陰』だとしたら、僕らのバンドは『陽』だね」
※「CROSSBEAT」2012年8月号 ケヴィン・シールズ

ほどなくして初期メンバーであり、このバンドの名付け親だったデイヴ・コンウェイとその彼女ティナが脱退。替わってデビー・グッギ(Ba)とビリンダ・ブッチャー(Vo, Gt)が加入し現在のラインナップになると、60年代のロック~サイケや70年代のパンクに影響を受けたアノラック色の強いサウンドへと変化する。もともとボーカルを取る予定ではなかったケヴィンがデイヴの代わりに歌い、ケヴィンと声質のよく似たビリンダとのツイン・ボーカル体制になったことも、MBVのサウンドを決定づけた大きな出来事の一つといえよう。

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