米議会乱入、バッファロー男の正体と無視できない陰謀論の影響

1月6日、ワシントンDCアメリカ国会議事堂に侵入するトランプ支持者たち。中央がジェイク・アンジェリ(Photo by Saul Loeb/AFP/Getty Images)

トランプ米大統領の支持者らが米連邦議会議事堂に乱入し、死傷者が出る事態に発展した事件。SNSで注目を集めた1枚の写真がある。議会に侵入したその男は、上半身裸でバッファローの帽子を被り、顔にはペイントを施している。

男の名前はアリゾナ州出身の俳優の卵、ジェイク・アンジェリ。「Qアノン・シャーマン」という呼び名でよく知られている。極右陰謀論Qアノンの熱烈な信奉者の1人で、トランプ支持者の集会ではフル装備で駆けつける常連だ。

Qアノンは、もともとは「Q」と名乗る投稿者が4chanで、自分はディープステートの陰謀の詳細をよく知る政府高官だ、と主張したのが始まり。

ヒラリー・クリントン氏やバラク・オバマ前大統領、ジョン・ポデスタ氏、(そしてなぜか)トム・ハンクスなど、民主党を代表する面々が実は児童売春組織の一味で、トランプ大統領を狙った「ディープステート」なる大規模な陰謀計画を企てている、というような数々の陰謀論を信じている。

Qの存在を信じる人々は、トランプ大統領がいつか売春組織の関係者を全員逮捕し、グアンタナモ収容所送りにしてくれるだろうと信じて疑わず、その日を「嵐」と呼んでいる。

今回、インターネットに台頭する過激思考を長年追ってきたQアノン信者たちは、ジェイク・アンジェリの写真の意味するところを見逃さなかった。

【画像ギャラリー】議事堂の外に置かれた「首つり縄」(写真19点)

「Qアノンの後押しと導きで、このような暗鬱な日を迎えた」とは、『QAnon Anonymous』というPodcastの共同司会者、トラヴィス・ヴュー氏のツイート。投稿には、誰もいない上院の議場に誇らしげに立ち、上半身裸で嬉々として勝ち誇ったように力こぶを作るアンジェリの写真が添えられている。ニューヨーク・タイムズ紙のケヴィン・ルース記者も同じようなコメントを発信し、議事堂を占拠した全員が必ずしも陰謀論支持者ではないものの、「Qアノンがいなければ今回のようなことは起きなかっただろう。冷笑的にQアノンを支持する政治家や党派に偏った著名人、長年Qアノンを拡散してきたプラットフォームの存在がなければ、こんなことにはならなかった」と指摘した。



TwitterやFacebookのようなプラットフォームは、陰謀論対策をおろそかにしてきたと何年も批判されてきた。そして大統領本人も、水曜の支持集会の演説であからさまに蜂起を扇動した。アンジェリは恐れおののく数百万人のアメリカ人に、彼の世界を見せつけた――我々はそうした世界に暮らしているのだと。

Translated by Akiko Kato

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