人間そっくりのアバターが出現、次世代バーチャルアシスタント「Mica」とは?

にっこり笑ったり驚いたり、感情豊かな表情をするバーチャルアシスタントMica(YouTubeより)

AmazonのバーチャルアシスタントAlexa(アレクサ)に向かって、生身の人間のように話しかけたり、ジョークを言うように設定したり、あるいは「Alexa、ナイン・インチ・ネイルズの『ハート』を再生して」というように、ありきたりのコマンド以外の会話を楽しんでいる人も多いだろう。そうやって人は、身体を持たない声と戯れている。だが、もしAlexaが目に見えるとしたら? 突如、人間の形をして現れたとしたら?

拡張現実を専門とするスタートアップ企業Magic Leap社は、10月上旬にカンファレンスを開催し、次世代バーチャルアシスタントMica(マイカ)をお披露目した。Micaは機能面ではAlexaやAppleのSiriとほとんど同じだが、ユーザーがMagic Leapの拡張現実グラスを装着すると、まさに人間そっくりのアバターとなって現れる。

にっこり微笑み、じっと目を見つめ、時にはあくびだってする。これにより、声でのやり取りがより一層現実味を帯びるという仕組みだ。「我々の関心は、デジタル化した人間の代役を作り出すには、どこまでシステムを推し進めれば良いという点でした」。Magic Leap社でAI部門の副部長を務めるジョン・モノス氏は、カンファレンスでこう述べた。「我々の誰よりも、彼女の顔の表情はあなたを惹きつけます」

「技術的なハードルは、人間の期待に応えられるだけの高性能な双方向性と知能をいかに獲得するかにあります」とモノス氏。Micaはまだプロトタイプで、Magic Leap社は商用版のリリース予定時期については明らかにしていない。実用化する頃には、彼女をよりリアルな存在にするために、どんな繊細なニュアンスが加えられているのだろう?

今年始め、人工知能研究の最先端を行く専門家たちは、AI悪用の危険性についてまとめた100ページにも及ぶレポートを発表した。テクノロジーを悪用すれば、フィッシング詐欺が、今後さらに進化し、巷に蔓延するだろう、とレポートの中では警告している。「AIシステムを駆使することで、サイバー攻撃にかかる費用は削減される。通常なら人間の労力と知能、専門知識を必要とする作業が、AIで遂行できるのだから」

AIはまた、フェイクニュースを拡散し、盗聴・盗撮を容易にするなど、悪意的な政治目的に使われる恐れもある。

「入手データをもとに、人間の行動や感情や信念を分析する能力の改良化が進めば、これを利用した新手の攻撃も出てくるだろう」ともレポートは論じている。「こうした懸念は全体主義国家のもとでは特に顕著であるが、民主主義国家においても、公正な議論を維持する機能が損なわれる恐れがある」

あらゆるAIの悪用方法を予測するのに加え、研究者たちは危険の回避方法についても提言を行っている。その中からひとつ挙げてみる。

「人工知能の研究者やエンジニアは、自分たちの研究が諸刃の剣であることを心得ておくべきだ。AI悪用に関する考察を自らの研究の優先事項や基準にも適用し、害をもたらすことが予測される場合には積極的に関係者らに助言を求めるべきだ」。Magic Leap社のデザイナーたちがこうした警告を念頭に置いていることを願うばかりだ。Micaのような人工物が各家庭にやって来て、クレジットカード情報を盗み、フェイクニュースをまき散らし、我々を裏切って政府に突き出す前に。



Translated by Akiko Kato

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