エルヴィス・コステロが語る、5年ぶりとなる新たな名盤『ルック・ナウ』

5年ぶりとなる新作について語るエルヴィス・コステロ(Photo by Rolling Stone)

エルヴィス・コステロが5年ぶりとなる新たな名盤『ルック・ナウ』をリリースした。新作アルバムでどのようにしてバート・バカラックとキャロル・キングが「アップタウン・ポップ」の要素を与えたのか、ローリングストーン誌に語ってくれた。

5年ぶりとなるニューアルバム『ルック・ナウ』が決して「小さなボックスのなかで人々を熱狂させるタイプのロックンロール作品」でもなければ、「赤い照明を点けて魔法のようなことが起きるのを期待させる」ものでもないことを理解してほしい、とエルヴィス・コステロは念を押した。新しいアルバムはダスティ・スプリングフィールドの『ダスティ・イン・メンフィス』を彷彿とさせる「アップタウン・ポップ・アルバム」だとコステロは言う。それは興味深いホルンの鋭い調べ、ストリングス、そして作り込まれたバックコーラスとともにあらかじめ入念に作曲されたものなのだ。「演奏する曲はきちんと練習しないと」1990年代初頭に楽譜を読むことと作曲方法を学んだコステロは言う。「そこではじめて自信を持ってレコーディングに挑める」。

コステロは新しいプロジェクトとかつてのものを比較する批評家のクセは好きではないが、自ら比較はするそうだ。「最初に言ったんだ、『インペリアル・ベッドルーム』の雰囲気と『ペインテッド・フロム・メモリー』のロマンティシズムと美しさを持ってくることができれば、きっといいものができるって。でも、新作を聴いてみるとどうだろう? どちらでもない気がする」。

アルバムのタイトル曲「ドント・ルック・ナウ」とバラードの「フォトグラフ・キャン・ライ」はどちらも『ペインテッド・フロム・メモリー』の共作者でもあるバート・バカラック——ジ・インポスターズとしてレコーディングに参加——との共作だ。実は、コステロは長年バカラックとふたりでミュージカル作品に取り組んでいるそうだが、まだ実現にはいたっていない。(「ゆったりとしてメランコリックで濃密なバラードがいくつか完成したんだけど、プロデューサーたちは首を縦に振ってくれなかった。きっとタップダンスが入っていなかったからだ。」)コステロは別の「ストリッピング・ペーパー」という曲でもバカラックにブリッジを作曲してもらおうとしたものの、バカラックからは、この曲には何も付け足す必要はない、という応えが返ってきたそうだ。「そう言ってもらえるなんて、すごく光栄だ」と言ったコステロではあったが、ちょっとしたハーモニックなひねりが「ヒーズ・ギヴン・ミー・シングス」にあるといい、と最後にアドバイスしてもらうことはできた。

また、コステロがキャロル・キングと作曲した「バーント・シュガー・イズ・ソー・ビター」は最終的には初期のスティーリー・ダンを連想させる——とくに女性のバックコーラスが入ってくるところ——作品となった。「そんなふうに聴こえるなんて、想像さえしなかった。バンドは好きだった。とくに初期の作品はね。でもみんな同じようなことを言うよね『あんたの初期の曲、あの怒ってるやつが好きだ!』ってね」。

ラテンポップというジャンルでもっとも名を馳せたセバスチャン・クリスと共同でプロデュースした『ルック・ナウ』には、長年コステロのバックバンドを務めてきたジ・インポスターズの多様性を披露するという目的もある。当然ながら、ジ・インポスターズはベースのデイヴィー・ファラガーを除く全員がコステロ自身のバンド、ジ・アトラクションズのメンバーだ。彼らはファーストアルバム『ディス・イヤーズ・モデル』から40年を経た現在も進化を続けている。「ジ・インポスターズはジ・アトラクションズとは別のバンドだよ。ジ・インポスターズには、最初のバンドにはなかった強みがたくさんある。でもそれは3人が40年ずっと演奏し続けてきたことで何かを学んだ結果だよ」とコステロは言った。

「何かを積み重ねてきているはずなんだ。バンドをはじめたころは大切だと思っていた音楽の性質はさておき。いつも同じ台本はつまらない。それに40年前とは違う人間になっているんだ。そうだろう? ロックンロール特有の永遠の若者のイメージバカげてるよ。だって人生で経験したことを反映するべきじゃないか。それに加えて。ファラガーはシンガーとしても頼りになるから、コーラスでできることも増える。それまでバンドにシンガーなんていなかったからね。そのころの自分がシンガーだったかも怪しいな」コステロは言った。

ローリングストーン誌によるコステロのフルインタビューを収めた動画を公開。追って公開予定のインタビューの続きもお楽しみに。


Translated by Shoko Natori

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE