フー・ファイターズ主催フェス「Cal Jam 18」現地レポ、熱狂のニルヴァーナ復活劇

フー・ファイターズのセットでは、アンコールで行うニルヴァーナのセットに上手く着地するように、25年間のヒット曲を時代を遡りながら演奏した。

ハード・ロックと怒りが激突しながらもビートルズ風のキャッチーなメロディを持つ「ザ・スカイ・イズ・ア・ネイバーフッド」が始まるやいなや、会場のファンは大合唱となった。これがその後に続く18曲で構成されたセットのエネルギッシュなオープニングとなり、そこからヒット曲やお気に入りの曲を、現在からバンドの始まりへと時代を逆行しながら演奏していき、最後にバンド結成前にグロールがカセットテープに録音した音楽へと到達したのである(このカセットテープはCal Jam18会場内のフーズ・ミュージアムに展示された)。

それぞれの楽曲はラジオ・バージョンとは異なるサウンドやテクスチャーの層が何層も加えられており、テンポやトーンも変えたアレンジとなっていた。何十年もライブをやってきたバンドならではの熱気と熱狂が頂点に達したライブだった。

Cal Jamは現在グロールが所有していて、彼が望むことをすべて実現できる場所だ。2017年、グロールはカリフォルニア南部で開催されていた有名なフェスティバルを40年ぶりに復活させ、これを個人所有のフェスとし、フー・ファイターズだけでなく、彼の友人やヒーローたちにスポットライトを当てている。2017年のCal JamではオリジナルのCal Jam(1974年開催)とリンクさせて、エアロスミスのジョー・ペリーをステージに招いた。今年のフェスでは、グロール自身の過去に思いを馳せて、90年代初頭にニルヴァーナとして有名になった頃まで遡ったのである。

フー・ファイターズの前に演奏したイギー・ポップにも深く長い歴史があり、今回のCal Jamではポスト・ポップ・ディプレッション・バンドと再会して演奏。アンコールではクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのヴォーカリスト、ジョシュ・ホーミとのコラボレーションを披露した。「ラスト・フォー・ライフ/Lust for Life」の大きなビートと共にポップはステージに躍り出た。久々に押し入れから引っ張り出した、くすんだルビー色のスモーキングジャケットを着てきたバンドにとってもこれは最適の選曲だった。


イギー・ポップ(Photo by Andy Keilen)

彼らがリリースした2016年のアルバム『ポスト・ポップ・ディプレッション』の楽曲も演奏されたが、今回のイギーのセットは70年代半ばにデヴィッド・ボウイがプロデュースした2枚のアルバム『ラスト・フォー・ライフ』と『イディオット』の収録曲だけで構成されていたと言っても過言ではない。ポップがこの2枚のアルバムの収録曲を1〜2曲ライブで披露することは珍しくはないが、これほど多くの曲を一度に披露することはレア中のレアだ。

音楽三昧の長い一日は、バイリンガル・バンドFEAの強烈なパンクから活火山のように火を噴くテネイシャスDのロックンロールまで、多種多様なサウンドに溢れていた。テネイシャスDは彼らのアルバム収録曲と映画『テネイシャスD 運命のピックを探せ!』の一番面を披露した。ジャック・ブラックが観客に向かってピックを投げて、こう言った。「ピック、地面に落ちたか? じゃあ、誰か拾っておいてくれ。あとで取り返しに行くからな!」

グレタ・ヴァン・フリートは、彼らが影響を受けたバンドの一つであるレッド・ツェッペリンの初期を彷彿させるクラシックなロックに、新鮮さと若々しさをプラスしたサウンドで会場を沸かせた。ビーズのネックレスに羽飾り、絞り染めのTシャツという出で立ちのヴォーカリスト、ジョシュ・キスカは、「Flower Power/フラワー・パワー」を若かりし頃のロバート・プラントのような声で歌った。この曲はもうすぐリリースされる彼らのデビュー・アルバム『アンセム・オブ・ザ・ピースフル・アーミー』にも収録されている。

フェスの前半ではガービッジが登場。現在は1998年にリリースしたアルバム『Version 2.0(原題)』の収録曲を90年代から現在へとサウンドを解体しながら押し広げることに特化したツアー中だが、一時中断してCal Jamに参加したのである。ヴォーカリストのシャーリー・マンソンは両目にオレンジ色のラインを施したメイクで登場し、猛烈なギター2本のサウンドと共に終末論的なおとぎ話の2017年の「No Horses(原題)」をオープニングに持ってきた。


ガービッジ(Photo by Andy Keilen)

彼らのヒット曲「Stupid Girl(原題)」や「Paranoid(原題)」も、オリジナルよりもヘヴィになり、刺々しさも増していた。特に「Paranoid」では、楽器隊がギター、ドラム、エレクトロニクスだけで繰り広げる怒涛のブレイクダウンに突入した瞬間、マンソンがステージ上を転げ回り始めた。

そして、ガービッジのセットの終盤でマンソンがドラムライザーに座って、トーチソングにように「Only Happy When It Rains(原題)」を歌い出すと、突然、小雨が降り出したのである。あの雨はシャーリーが呼んだものに違いない。

Translated by Miki Nakayama

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