脳と脳でつながれた未来のソーシャル・ネットワークとは?

電極付きヘッドセットを使って脳の電気活動が記録される。

物理学者と神経科学者が世界初の「ブレイン・トゥ・ブレイン」ネットワークの開発に成功した。

9月の最終週に米シアトルにあるワシントン大学のリサーチャー・グループが、彼らが「ブレインネット(BrainNet)」と呼ぶ独自のインターフェースを通じて、テトリスに似たゲームを少人数のグループが同時に意思だけでプレイすることに成功したと発表した。

ここで使われるのは、脳の電気活動を記録した脳波図(EEG)と、脳に電波信号で情報を送る経頭蓋磁気刺激(TMS)。これによって人間は直接脳と脳でコミュニケーションできるというものだ。

さらに、「この結果は、脳でつながれたソーシャル・ネットワークを経由して、人々が共同で問題解決を行えることを可能にするブレイン・トゥ・ブレイン・インターフェースの今後の可能性を広げるものだ」と述べている。

このブレインネットというネットワークの仕組みを実証するために、リサーチャーたちは一つのゲームを設定し、1グループ発信者2人、受信者1人という3人の参加者で構成された5グループが用意された。

ゲームの内容は、スクリーン上で上からブロックが落下し、スクリーン下部にブロックが積み上がり、ブロックが揃うと消えるというもの。

発信者はスクリーン下部しか確認できず、スクリーン上部しか見れない受信者にブロックの動きの情報を送る。発信者はスクリーンの片側にある15〜17ヘルツのLEDライトを見ることでEEGが感知する脳内の電子信号を変更でき、受信者にはTMS(経頭蓋磁気刺激)経由で、「回転する」なら光が点灯し、「回転しない」なら光が点灯しない形で指示された。もっと厳密にいうと、受信者は「光の点灯を見た感覚」を体験したのである。つまり、すべて後頭皮質へ送られた磁気パルスの作用ということだ。

受信者は発信者とは別の部屋にいて、ゲームを始める前の会話は一切禁じられ、発信者が送ってくる情報に従って順次ブロックの動きを決めるというのが、このデモンストレーションだった。

いわゆる脳を使ったソーシャル・ネットワークの開発はまだ始まったばかりといえよう。現在成功しているのは「回転する」と「回転しない」(つまり「イエス」と「ノー」)の2つの信号だけだ。しかし、MySpaceからLive Journal、そしてFacebook、Twitter、Snapchatへと、その進化のスピードを思い起こしてほしい。現時点で光の点滅でテトリスをプレイできるなら、2〜3年後に電極と脳波を使ってどんなコミュニケーションができるか、誰にも予測できないはずだ。実際、リサーチャーは今後どのように拡大していくかを既に話し合っていて、今回の結果を「送信者の数をさらに増やす準備ができている」状態とみなす一方で、このネットワークを研究室からインターネットへと移行する方法も考えていると言う。

「異なるブレイン・トゥ・ブレイン・インターフェース・ネットワーク装置間の情報伝達を指示し、インターネット経由で地球規模のオペレーションを可能性にするのはクラウドベースのブレイン・トゥ・ブレイン・インターフェース・サーバーだろう。そして、これによって地球規模のブレイン・トゥ・ブレインの交流がクラウドベース上で可能になるはずだ」と、リサーチャーは今回の発見に追記している。そして、「このようなインターフェースの開発は、人間同士のコミュニケーションや共同作業における新たなフロンティアの幕開けというだけでなく、人間の脳の仕組みについて深い理解を促すポテンシャルを持っている」と続けている。

Translated by Miki Nakayama

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