ジョーン・ジェットが語る、自身の半生とMeToo運動が音楽業界に浸透しなかった理由

ジョーン・ジェットの新ドキュメンタリー「Bad Reputation(原題)」が製作された(Photo by Kevin Mazur/WireImage for Live Nation)

ジョーン・ジェットは、新ドキュメンタリー「Bad Reputation(原題)」で自身のキャリア、活動の源、そして#MeToo運動が音楽業界に浸透しなかった理由についてローリングストーン誌に語ってくれた。

ドキュメンタリー作品「Bad Reputation(原題)」では、ジョーン・ジェットのジェットコースターのような人生を、年代を追いながら90分間の映像作品に収めている。ランナウェイズでの成功、それに続く解散の泥沼劇、自力で勝ち取った成功とメジャーレーベルの妨害。衰えゆく人気と同時に起きたワープド・ツアーの改革。このような状況を克服しながら、彼女はブレもせず、自分の道を突き進んだ。ドキュメンタリーの中で、デビー・ハリー、マイリー・サイラス、マイケル・J・フォックス、クリステン・スチュワートなど、様々な有名人が登場してロックンロールに対するジェットの貢献の大きさを称賛する一方で、可愛らしい女子高校生が黒革の衣装をまとったアイコンになるまでが描かれている。

ジェットは全部を咀嚼するのに苦労しているようだ。「少し圧倒されるし、かなりシュールね。まあ、良い意味で、だけど」と、ロングアイランドの自宅にいるジェットが電話の向こうでお馴染みの歯に衣着せぬ素っ気ない話し方で答えた。「全部が順序立てられているのがいい感じだし、今、これらのストーリーを披露できることが素敵よ」と。

このドキュメンタリーを思いついたのはキャリアン・ブリンクマン。ジェットのバンドメイトであり、偏在的マネージャーであるケニー・ラグーナの娘だ(ラグーナがどれだけ偏在的は、ジェットのレザーパンツのお尻の部分をテープで応急処置する彼の姿など、ドキュメンタリーに登場する幾つかのシーンを見るとわかる)。ケヴィン・カースレイクが監督したこのドキュメンタリーは、ジェットの人生を描きながらも、その実はブリンクマンがどんなふうに育ったのかを人々に教える一つの方法だったと、ジェットは見ている。もともとブリンクマンは自分の人生を題材にしたシットコムを作るつもりでいた。しかし、その後、彼女の興味はジェットの人生へと移ったのである。周りから浮いてしまうティーンエイジャーがロックの殿堂に入るまで。「それら全てを描けるのがドキュメンタリーなの」と、彼女が誇らしげな口調で語る。

ある意味で、これはジェットにとって自分自身の正当化であり、過去を受け入れる方法ともいえる。作品の最初の方に出てくるシーンで、あるレーベルからの不採用通知が映し出される。それには、彼女が送った曲の中にピンとくるものが一つもなかった、と書かれている。彼女が送った曲は「I Love Rock ‘N’ Roll(原題)」、「Crimson and Clover(原題)」、「Do you Wanna Touch Me(原題)」、そして「Bad Reputation(原題)」。この4曲はのちに人気者となったジェットのキャリアの方向性を決めた曲である。「やっとこの事実を公表できて気分が良いわね」とジェット。「これってインタビューで話すようなネタだけど、実際にスクリーンに通知が映し出されると、見た人は『うわっ!』ってなるはずだから」

―逆境から立ち直る力はどこから生まれるのですか?

生まれつき持っていると思う。たぶん、子供の頃から望むものになれると両親に教えられたせいね。私は長子だったから。それがリスク回避型の性格と関係しているのかはわからないけど、できるとわかっていることを「それは無理だ」と言われたりすると……例えば学校のバンドでクラリネットを吹くとかね……頑張っちゃうわけよ。
誰かが女の子にロックンロールなんて無理と言うときは、その子に「君はギターを覚えられない」と言っているわけじゃなくて、ロックがセクシャルな類いの音楽で、セクシャルが許されるのは男だけだから、女の子はロックンロールは許されないって言っているってこと。でも、あの頃の私はまだそんなことまで考えていなかった。とにかく、自分ではできるとわかっていることを「君には無理だ」と言われるのが嫌だった。まあ、突き詰めれば、社会的な偏見に反抗していたってことね。

―今年は女性たちの異議申し立てや音楽業界の女性の少なさが話題にのぼることが多かったのですが、今後この問題がどんなふうに収まると思いますか?

どんなふうに収まるのかは私にはわからない。最も重要なことの一つは、方針決定の権利を持つ地位にもっと多くの女性が就くことね。だって女は考え方も問題の解決方法も男とは違うから。

―今年になって、2017年のトップ40になったヒット曲を作った女性プロデューサーの割合は全体の5%以下という統計が出ました。この5%以外はすべて男性ということです。

うわー! ほら、そういう(女が作った)レコードがリリースされていたとしても、みんなに聞いてもらう機会を持てるラジオ曲でのエアプレイをしてもらえないってことがあると思うよ。女を邪魔する方法はたくさんある。自分が作りたいと思うレコードを作ったとしてもね。女が作ったレコードはたくさんあるけど、みんなの耳に届かないのよ。


Translated by Miki Nakayama

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