学校への賄賂は当たり前…タイ映画史上1位の作品に込められた教育システムへの疑問

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(©GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.)

タイ国内映画として2017年の年間興行収入第1位を記録、タイ・アカデミー賞では史上最多の12部門を受賞した『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』が、日本でも9月22日(土)より、全国順次公開となる。

中国・香港・台湾・ベトナム・マレーシア・ブルネイ・マカオ・フィリピンなど、今勢いのあるアジア各国でサプライズ大ヒットを記録し、辛口で知られるアメリカの映画批評サイト・Rotten Tomatoesでも高い評価を受けていることからもわかる通り、映画好きにはたまらない要素が詰め込まれた本作。タイの天才高校生が仲間とチームを組み、その明晰な頭脳と度胸でもって、熾烈な受験戦争下で世界を股にかけた一大カンニングプロジェクトを遂行する、という内容だ。アジア新興国の勢いや焦燥から生まれる底力、また国内での経済的格差の表現なども含め、観るものを1秒たりとも飽きさせない。

日本でも経験者は多い“受験戦争”をテーマに、これほどのスリルとエンタテインメント性を込めることに成功した新しき俊英・ナタウット・プーンピリヤ監督に、本作について話を聞いた。

ーとてもスリリングで、実際自分が大学受験をしたときのプレッシャーや焦りについてなど、いろいろなことを思い出させられる作品でもありました。タイはもちろん、アジア各国でも大ヒットということですが、実際どのような層に『バッド・ジーニアス』は響いたのでしょうか?

プーンピリヤ:ありがとうございます。反響はいろいろな層からあって、しかもそれぞれ視点が異なりました。学生達は「試験のプレッシャーをよく理解してくれている!」と言っていましたし、それより少し年上の年代は、カンニングのシーンが楽しめたようです。そしてもっと年配になると「タイの不透明で不公平な教育システムについてよく言ってくれた!」という感想をたくさんいただきましたね。今までこんなに真摯な視点でこの問題を取り上げてくれたものはなかった、と言われました。

ー現在のタイでは学歴などの格差も広がり、お金持ちの家庭が子どもの入学のために学校へ賄賂を渡すことが社会問題となりつつある、ということなのでしょうか?

プーンピリヤ:昔から確かに大きな問題ではあるのですが、もうみんな慣れすぎてしまって、問題視すらしていないという状態です。入学に際しての賄賂が悪いとも思っていない。有名な学校の場合、学生の質で選考しているのではなく、どれだけ家がお金を払ってくれるかで選んでいると言っても過言ではない。だから、お金が無い学生はチャンスをもらえないことがとても多いです。

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