追悼・マック・ミラー|2016年ローリングストーン誌インタビュー全文掲載

ー彼女のボーカルは天才的ですよね。彼女と共演することに気後れは感じましたか?

彼女と歌で張り合おうなんて気はさらさらないよ。絶対にね。彼女はまさに天使の歌声なんだ。「ワオ、スゲェ」って誰もがうなる声。俺はと言えば、その時の感情のまま歌ってるだけ。それを一緒にしたら、こうなったってわけ。

ーこういう曲を作ると、ヤワだとか女々しいとか思われる心配はありませんか?

そんなこと考えたことないよ。世間からはこれまであらゆる評価を受けて来たし、音作りの時にはどんな音にするかしか考えてない。それがどう受け止められるかなんて気にしてないよ。俺らしくないと人々が想うんじゃないかとか、そんなことは同だっていい。とにかく、いままでにない世界観を作りたい。誰もがやってきて、楽しめるような世界をね。マック・ミラーの評価が音楽にどう関係するのかとか、そういうことに縛られるのは非生産的だよ。俺はただ音楽を作っているだけさ。

ーケンドリック・ラマーとのコラボレーションでは、どんなことを学びましたか?

彼にこの曲を聞かせた時、彼とは馬が合ったんだよね。電話で話をして、彼が「もっと歌ってみないか」って言った時は、「冗談だろ」って思った。それがまさに、彼と顔を合わせて曲を作る2日前。会った時にはもう完成してて、「たぶん気に入ると思うよ」って言ってやった。自分の音楽を突き詰めていると思える人たちと一緒に過ごせば過ごすほど、時間をかけることが大事だということに気づかされる。長時間耐えて、無理にひねりだすんじゃなく、とにかく時間をかけて曲と向き合って、完成させていく。そういうことを教えてもらった。

ーVince Staplesとは、ヒップホップや人種について語ったことがありましたね。彼はイケてない白人ラッパーと、本当にクールなラッパーの違いを語っていました。あなた自身はどう考えていますか? あなたも彼の言わんとすることはお分かりだと思うのですが。

俺自身は自分のことを音楽を作る人間で、たまたま白人にすぎないと考えている。アメリカでは、人種は自分の人生と密接にかかわっている。俺はすべての人々のために音楽を作ろうとしているだけ。ある特定の人種に向けて曲を作っているつもりはないし、特定の誰かを取り上げるつもりもない。俺はただ音楽を作っていて、たまたま白人だっていうだけのこと。俺の音楽に耳を傾けてくれる人は誰であれ、大歓迎だよ。

ーマックルモアは、自らのラップする権利に疑問を投げかけていましたが、あなたはいかがでしょう?

音楽という点では、疑問は感じない。白人であることが音楽上の成功に関係するか、考えたことがあるか? と聞かれれば、もちろんある。これが現実だから。だけど、俺が音楽を作る権利は誰から与えられたものでもなければ、誰にも奪えない。アメリカでは、人種は自分の人生を左右する大きな問題だけど、俺はすべての人々の音楽を作りたいだけなんだ。

ー薬物を断ったことで、何か変化はありますか?

この地球上には、ある種の引力があるんだ――朝日とともに起きて、日が暮れれば練る、みたいな。今まで一度もそういうことはなかった。でも今は、夜になればベッドに行くし、朝になるとちゃんと目覚める。生活にいいバランスが出来てきたね。最悪な気分になることもなくなった。

ー音楽活動にはどんな影響がありましたか?

より自分のリアルな感情を表現できるようになった気がする。特に声でね。しかも無理やり仕上げるということがなくなった。昔は、曲が未完成のまま中断するのがいやで、ひとつの曲をつくるのに何日も徹夜していた。それが今は、インスピレーションが湧くときもあれば、そうでないときもあるんだってことがわかって、ヒラめいた時にだけ作業することができるようになった。声も、いまでは楽器のような感じになってきた。素面のほうが声でいろんな表現ができるしね。

ー子どものころ、最初に聴いたのはどんな音楽でしたか?

最初に聴いたラップアルバムは、アウトキャストの『Aquemeni』。それが全てのはじまり。『Aquemeni』を手にばあちゃんの部屋に行って、ばあちゃんはCDプレイヤーを持ってたからね、CDプレイヤーを持ち出して、歌詞カードをひっぱり出して、自分の部屋に鍵かけてCDに合わせてラップしてたよ。

ーそれだけで? それでハマった?

(笑って)。それでハマった。なんかラップもできちゃったしね。

Translated by Akiko Kato

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