エド・シーランの新作ドキュメンタリーが明かす、ヒット曲誕生の裏側

アビー・ロード・スタジオで「パーフェクト」をレコーディング中のシーラン(photo by Abramorama )

世界で300万枚のセールスを記録したアルバム『÷(ディバイド)』の制作過程を追ったエド・シーランの新作ドキュメンタリー『Songwriter(原題)』が、現在全米で公開中だ。「観客がその場にいるような感じにしたかったんだ」と、監督のマレー・カミングスは語る。異例の密着取材で、大ヒットアルバムが完成するまでを追った作品に迫る。

「曲っていうのは不思議なものでね」と語る、エド・シーラン。2017年にリリースされるや、300万枚のセールスを記録したアルバム『÷(ディバイド)』の制作過程を追った新作ドキュメンタリー『Songwriter(原題)』の1コマだ。「いきなり現れてはパッと消える。前触れもなにもないんだ」

現在、全米で劇場公開中、8月28日からはApple Musicでもリリースされる『Songwirter』は、エド・シーランの制作現場をリアルタイムで追いかけたドキュメンタリー映画だ。シーランは、長年ビデオ製作に携わってきた従兄弟のマレー・カミングスに異例の密着取材を許可。カミングスはこれを機会に、いままで誰もやってこなかった、創作過程の貴重な瞬間を追いかける長編映画を作ることにした。

「ジェイ・Zの『フェイドTOブラック』(2004年公開)で、ティンバレイクと一緒に曲作りしているシーンがあるよね。ティンバレイクが曲を弾き始めたシーンを見た時、『おい、これはもしや、誰もが知ってるあの曲をティンバレイクがジェイ・Zに初めて聞かせた瞬間じゃないか?』って思った。すごくエキサイティングな場面だった。『映画の最初から最後まで、全部こういうシーンだったらよかったのに』って思ったのを覚えてるよ」

一流アーティストともなれば、アイデアが生まれる瞬間は表にでてこないのが一般的だが、『Songwriter』はそんな貴重な場面を垣間見ることができる。のちに何百万枚のセールスを記録することになるジャスティン・ビーバーの「ラヴ・ユアセルフ」を、ツアーバスの中で作曲するシーラン。ベニー・ブランコと1週間クルーズの旅に出て、船の上で曲作りをするシーラン。制作陣とマリブにこもって、アルバムに専念するシーラン。さらに映画では、時差ボケ気味のシーランが早朝5時に目覚めて外に飛び出し、身の回りの風景を歌詞にしたため始めるシーンも出てくる。「彼が、『なんか目が覚めちゃってさ。とりあえず曲を書こうと思うんだけど』と言ってきた」と、カミングス監督は当時を振り返る。「だから僕もカメラをつかんで、自分たちのそばに置いて撮影した。観客もその場にいるような感じにしたくてね」

『÷(ディバイド)』の制作は、シーラン個人にとって大きな転換期となっただけでなく、曲作りという点でもターニングポイントとなった。「エドの曲作りのスタイルが変わったんだ」とカミングス監督も語る。「あの当時の彼を撮影することができて本当にラッキーだよ。エドはそれまで黙々と紙に手書きで曲を書いていたのが、やがて声を出して、歌いながら曲を作るようになった。彼の思考が、音となって彼の口から飛び出す。このアルバム以前はめったになかったことだ。映画的にも、彼が頭の中で考えていることを知ることができる興味深いシーンになったね」

最新作に取り組むシーランを四六時中追いかけるうちに、予想外のことも起きた。撮影そのものが、微力ながらシーランの曲作りに貢献したのだ。常に撮影されていることに慣れてきたのか、シーランはいきなり即興で歌詞を歌い出すことがあった。「歌ってたフレーズを忘れることもたまにあって、そういう時は僕のほうを見て『今の撮ってたよね?』って訊いてくるんだ」

Translated by Akiko Kato

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