K-POPはいかにして世界制覇を成し遂げたのか?

韓国のポップ・ミュージックがアメリカの音楽シーンに初めて登場したのは2012年。このとき、過激なビートと大胆なスタイルのビジュアルが融合したPsyの「Gangnam Style(原題)」のMVが、YouTubeで10億回を超える再生回数を初めて記録した。しかし、現在のK-POPファンの多くはあの曲を一過性のヒットと捉えている。「『Gangnam Style』は例外」と、キロレンが説明する。「この曲はインターネット・ミームとしてネット主体で拡散されたものだから。それこそ、『これ、面白から見てみろよ』というふうに」。また、その後、韓国の他のレーベルが世界進出を試みるも、徐々に消えてしまった。9人編成の少女時代が2011年にインタースコープ・レコードからデビューしてキャンペーンを行ったが、結局は「上手く行かなかった」と、ベテラン業界人が教えてくれた。少女時代の前にはワンダーガールズがジョナス・ブラザーズのオープニングとして彼らのツアーに同行したが、ヒット曲を出せずに失敗している。ブルーノ・マーズやワン・ダイレクションへ楽曲提供してきたクロード・ケリーが少女時代にも楽曲を提供したのだが、そのときにK-POPがブレークしなかった理由が理解できないと彼は言う。「彼の地(韓国)のポップスは、曲のサイズ的にこれまでずっとマイケル・ジャクソンの影響が強かった。彼らは制作や金銭やリハーサルなどを明け透けに公開するので、あれほど大きな制作費を費やしたショービジネス作品が、そのポテンシャルほどアメリカ文化に影響を与えない理由は何なのか、いつも不思議に思っていたんだ」と。


米ニュージャージー州ニューアークで2018年6月23日に行われたKCONに参加するK-POPファン。KCONは韓国で大人気のポップバンドやグループを集めて行われるコンベンション的イベントで、2012年から毎年北米で開催されている。

ケリーの疑問の答えは、その頃のグループは世界規模の観客にアピールしようと必死で、早期に結果を出そうと焦りすぎたことかもしれない。ワンダーガールズも少女時代も、自分たちのヒット曲を英語で吹き込んだにもかかわらず、離陸すらできないままで終わったのである。一方、BTSは韓国語で歌い続けながら、西洋のポップスを異なる形で音楽に取り入れていた。「『Fake Love』の音楽は本当によくできていて、普通に聞くことができ、普通に好きになる。歌詞はほとんど気にならない」と、テキサス州ヒューストンのラジオ局KRBEのラジオ番組ディレクターのレスリー・ホイットルが説明する。BTSの最初の全米トップ10アルバムである2017年の『Love Yourself:Her(原題)』にはチェインスモーカーズと共同で作った楽曲が収録されていた。その後、BTSはスティーヴ・アオキ、ゼッド、アリ・タンポジ(カミラ・カベロの「ハバナ/Havana」とケリー・クラークソンの「ストロンガー/Stronger」を共作)などとコラボレーションを行った。

そして、複数の異なるジャンルと文化を一緒に混ぜ込むことで、K-POPはアメリカン・ポップスでお馴染みのリズムを、一味違うものとしてパワーアップしているのである。「トップ40に入っている曲のリズムはミドルテンポからスローばかり。その点、K-POPのリズムは楽観的で前向きな印象を残す」と、ホイットルが言う。そして、「韓国のポップ・ミュージックは他との区別化と変化が好きなの」とソングライターのロドネー・“チック”・ベルが説明する。「アメリカのポップ曲1曲内のメロディーは平均して4つ、時々5つのことがあるけど、K-POPの場合は8つから10ね。その上、ハーモニーが重厚よ」と。これはアメリカ人のR&Bのヒットメーカーにとって朗報だ。彼らの中にはアメリカ国民がR&Bに背を向けて、現在の主流となっているヒッピホップで多用されるループやミニマル・メロディーを聞くようになっていることにフラストレーションを感じている人がいるのである。テディ・ライリー(ブラックストリート、キース・スウェット)とハーヴェイ・メイソン(マリオ、トニ・ブラクストン)は90年代を彷彿させるR&Bによって海外での仕事を新たに見つけた。「今、僕たちは逆輸入で米国内に紹介されるという現象になっているよ」と、前出のケリーが言う。彼の説明によると、K-POPのアクトは「君が昔やったこれはカッコいいし、僕たちは今でも大好きだ」(ケリー談)という反応らしい。

Translated by Miki Nakayama

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