全米初登場首位を記録、映画『クレイジー・リッチ!』主演女優が語る「ハリウッドにおけるアジア系」

コンスタント・ウー、映画『クレイジー・リッチ!』のワンシーン

全米公開初登場で首位を記録した映画『クレイジー・リッチ!』。全世界公開のアジア系フルキャスト映画としても注目されているが、同映画の主演女優コンスタンス・ウーが、ローリングストーン誌のインタビューで、ハリウッドの表面的な平等主義、固定概念、『クレイジー・リッチ!』が転機といわれる所以を語ってくれた。

ハリウッドにもついにアジア系ヒロインが誕生か? ABCのドラマシリーズ『Fresh Off the Boat』で、泣く子も黙る肝っ玉母さんジェシカ・フアン役を演じ、お茶の間のスターとなったコンスタンス・ウー。最近では、ジョン・M・チュウの小説を映画化した恋愛コメディ『クレイジー・リッチ!』のヒロイン役に抜擢された彼女は、冒頭のような問いかけがようやく収まってきたことを実感している。

映画の中でウーが演じるのは、アジア系アメリカ人の経済学者レイチェル・チュー。恋人ニック・ヤングの家族に会いに、ニューヨークからシンガポールへやってくる。ところが、ニックの家族は世界屈指の不動産王であることが判明。そこからストーリーは、義理の両親との出会い、特に超リッチなセレブファミリーともなれば避けられない、ありがちなスッタモンダへと発展するのだが、主演俳優、舞台設定、人物設定が全く“ありがち”ではない。全米で8月15日に劇場公開された『クレイジー・リッチ!』(日本公開は9月28日)は、キャストが全員マイノリティ人種、それもアジア系フルキャストの映画としては初の全世界拡大版公開となった。公開されるや、インターネット上では何か月にもわたってハリウッドにおけるこの映画の立ち位置について議論がもちあがり、山のような批評や投書が寄せられた。

この手のシチュエーションには、ウーは慣れっこだ。2015年、ABCが鳴りもの入りで放映スタートしたオール・アジア系の画期的なドラマに出演していたおかげで、彼女はもう何年もハリウッドでのアジア系起用を呼びかけるムーブメントの代名詞だった。一時期は、『LUCY/ルーシー』や『小悪魔はなぜモテる?!』といった映画のポスターに彼女の顔を張り付けた#starringConstanceWuというハッシュタグ付きのアイコラ画像がSNS上に出回り、アジア系俳優の主演作品がほぼ皆無である点が指摘された。このほどローリングストーン誌とのインタビューに応じたウーは、『クレイジー・リッチ!』の野望、そしてエンターテインメント業界における多様性の実現に向けた闘争を語ってくれた。

ー『Fresh Off the Boat』と比べて、『クレイジー・リッチ!』の撮影はいかがでしたか?

全然違ったわ。唯一の共通点と言えば、20年かけて初めて手にしたTVドラマの役がアジア系アメリカ人で、25年経ってやっと手にした主演映画の役もアジア系アメリカ人だった、ってところかしらね。デジャヴみたいな、変な気分よ。でもね、『Fresh Off the Boat』の登場人物はみな子供を持つ親か、子供でしょ。どっちかというと仕事という感じ。毎週末、子供と大暴れする、なんてこと実際にはないもの。でも『クレイジー・リッチ!』はプロジェクトに関わっている感じだった。単なる仕事じゃなく、情熱を注いだプロジェクト。私にとっては、まさに天のお告げを受けたみたいだったわ。

ー撮影中は、カメラが回っていないときはどんな会話をしていたんですか?

家族のことや友達のこと、デートとかファッションとか、そんな話。あとは、どんな仕事に関わっても、結局は自分たちがいわゆる“アジア系の見本”みたいにしか扱われないのよね、なんて話もしていたわ。

ー『Fresh Off the Boat』のジェシカは、『クレイジー・リッチ!』のレイチェルとはずいぶん違いますよね。その違いをどう感じますか?

ジェシカを演じるにあたっては、実際にジェシカ本人と会って、彼女から聞いた実話をもとに役作りをしたわ。渡米した時のこと、大人になって移民として訪れた国のこと、生まれ育った環境とか、そういうことをベースにしたわ。ジェシカは自分のルーツである土地で育ったから、レイチェルがシンガポールに来た時とは違って、確固たる自信があるの。そうした彼女の自信が笑いを誘うのは、彼女が鬼ママだからじゃなく、英語が話せない人や訛りを持つ人たちに対してアメリカ人がある種の固定概念を抱いているから。つまり、ジェシカはジェシカであるがゆえに特別な存在なのよ。訛りがあるからって意見を控えることはしない。彼女が育ったところでは誰もがしっかり主張していたからね。でもレイチェルの場合、自分がマジョリティには属さない環境で育った。メディアには自分たちの居場所はないと思っていた。私もレイチェルもそうだけど、そういういう立場にいると、自分のどの部分がアジア系で、どの部分がアメリカ的かしら、なんてことを考えるのよね。自分の中に両方の要素があるから、板挟みになっちゃうの。


ABCのドラマ『Fresh Off the Boat』でジェシカ役を演じるウー

Translated by Akiko Kato

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