ABBAの絶頂期を知らずに育ち、『マンマ・ミーア!』のサントラで初めてABBAを知ったという20~30代にとっては、さながら楽園を夢見る者が歴史を掘り起こすようなものだろうか。
ポップがもっとも天真爛漫で、もっとも影響力のあった時代のアーティストを発掘するには、これが一番いい方法だろう。そういう意味でみれば、現在も生き続けるABBAの音楽はノスタルジックなタイムカプセルというよりも、ここ数年出てきたノリノリかつ胸キュン・シンセロックの流行をそっくり反映した写し鏡といったほうが正しい。同郷のスウェーデン出身のRobynやトーヴ・ロー、テイラー・スウィフトの「1989」、カーリー・レイ・ジェプセンの「エモーション」などがいい例だ。ABBAの1975年のヒット曲「SOS」のようなダンサブルで切望感に満ちた楽曲は、他の誰もができなかった方法で、ポップの過去と現在を結び付けている。
断言するのはまだ早いかもしれないが、シェールのアルバム『ダンシング・クイーン』は彼女のキャリアでも空前絶後のヒットとなるかもしれない。2つのポップスターが結束した希少かつ運命的な瞬間は、おそらくシェールにとってもABBAにとっても、うれしいサプライズだろう。両者の人気は、カルチャーシーンでの両者の存在価値が上昇する以前から支えてきたファンの存在があってこそなのだから。
映画『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』
8月24日(金) 日本全国ロードショー