大橋ちっぽけ、繊細な音楽に隠された「ギャグマンガ好き」のギャップ

ーミニアルバム『僕と青』にまつわるエピソードは?

大橋 「オレガノ」って曲があるんですけど……。受験期にボロボロになったとき、もうむちゃくちゃだ!と思ってパジャマで、勉強道具をほっぽり出して、なんとなくギターを持ってベッドでグデーッとしていたとき、最低だなと思ってできた曲なんです。曲を作るぞって言ってギターを持って書くとなかなかできなくて、普通に生活してて、ふと物思いに耽ったとき、根底にある思考とかマイナスな感情とか、そういう部分から言葉やメロディが出てきたときに、いい曲ができると思う。

この間も、名古屋でライブがあった帰りに夜中、事務所の人たちとクルマで移動して、クタクタになって助手席座ってたら、「あれ? なんで俺、名古屋に歌いに行ってたんだろう」って。ちょっと前までネットに自分の歌をアップするのが好きな、しかもその前はマンガ家になりたいだけの少年だったのに、なんでこんなことなってるんだろうって、なんか変な、不安な気持ちになりながら何時間も乗っていて。

そういうときに自分がゲシュタルト崩壊するというか。やらなきゃいけないこととかやりたいことが目の前にあるんですけど、ちょっと数日何もないとき、「あれ!? 俺、両国国技館で歌ったんだよな? テレビ出てたんだよな?」って突然思い出すとワケわからなくなる。

明るい曲も書きたいんですけど、今の気持ちを書いてたら自然と暗くなるっていうか。友達少ない割に、ひとりで大丈夫だからひとりでいるタイプでもなくて、みんなといたいのに一人になっちゃうみたいなタイプの人間。寂しいとかつらいって気持ちがずっとあって(笑)。暗い歌詞ばっかり書いてますね。恋したてのときくらいじゃないと明るい曲が書けない。



ーそれはなかなか難儀ですね。

大橋 恋愛が始まって中盤ぐらいになると、その先の別れの悲しみとか勝手に思って。

ー(笑)。

大橋 きっと本当は何でもない言葉だったり、何気なく言われたことだったり、軽い感じで自分の耳を通り過ぎた言葉も、あらためて拾ってじっくり考えて書く感じなのかも。 “音楽を作る自分”が音楽を作ってる感じになっちゃってる。すごくつらいんですよ、曲を書くときとか。つらくなるんです。そういう自分ばかりと向き合っちゃう。ギターを弾くと友達との別れとか、恋人との何とも言えないさよならをしたときとか、そういうことばかり考えちゃって。楽しいことが好きな自分とあんまり向き合えてないっていうか。だけどやっぱり自分なりに書いたり、自分なりに作ったりするのが好きで。それが原動力になってるんじゃないかなって思います。

ー今後はどんな音楽をやりたいですか?

大橋 ゆくゆくはハンドマイクでステージを動き回って「うへへ!」ってやりつつ、でもめっちゃカッコいいみたいな、そういうのには憧れがあります。ギャグマンガみたいにめっちゃ面白くてくだらないことを歌にしたい。今は自分の本心を歌っているつもりではあるんですけど、なんかまだ開けられてない扉がある気がするので。



『僕と青』 大橋ちっぽけ
respond 発売中

大橋ちっぽけ
1998年生まれ。愛媛県松山市出身。UKロックなどに影響を受け、ネットの動画サイトに歌唱投稿を開始。高校3年生のときに「未確認フェスティバル2016」に応募し、セミファイナリストに残り、「BURNOUT SYNDROMES」と心斎橋JANUSにて共演。その後、「Shout it Out」のフロントアクトを務める。高校生離れしたメロディセンス、エバーグリーンで、心にすっと溶け込む歌声が大きな話題を呼ぶ。2017年4月より上京。両国国技館で3月10日に開催された「J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE~YOUNG BLOOD~」でオープニングアクトとして異例の抜擢をされ、1万1000人のオーディエンスがその歌声に心を奪われた。

撮影協力:マンガサロン「トリガー」
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-15-2 コンパルビル4F
http://mangasalon.com/

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