ポートランド出身「フォーク界待望の逸材」と称されるヘイリー・ヘンドリックスの素顔

Photo by Alessandra Leimer

ポートランド出身の心優しい、おおらかなガーデニング少女ヘイリー・ヘンドリックス。2018年に時代の声を代弁し、予想外の大ブレイクを果たし「フォーク界が待ち望んでいた逸材」と称されるまでにーー。ちょっぴりシャイな不思議少女ヘイリーの素顔に迫った。

ヘイリー・ヘンドリックスの歌声には、しなやかな力強さと、天真爛漫なところがある。3月にリリースしたデビューアルバムではその声で、時代が求めるスローガンを発信した。歌声はやがて絶叫へと変わり、アルバムタイトルにもなっているメッセージを高らかに叫んだ。「I NEED TO START A GARDEN!(ガーデニングを始めたいの!)」

今年だけですでに100回以上のライブをこなしているヘンドリックスだが、最近行われたシカゴのコンサートでは自分の世界観をたっぷり見せてくれた。ギターをチューニングする間(独特のピッキング奏法のため、頻繁にチューニングが必要)、彼女はは観客に呼びかける。「これから15秒間、知らない人に『やあ!』って挨拶してみて!」 この日の観客はシャイなタイプだったが、少しずつ挨拶が始まった。そこへ彼女がいきなり割って入ってきて、「ちょっと変わったベルギー人の先祖」について話し始めた。家族のゴタゴタに巻き込まれて、ボートで逃げ出し、はるばるシカゴまでやってきた云々。「演奏の合間のおしゃべりをもっと練習しないとね」と、彼女は言った。

世間に対する彼女のアプローチは、いつもこんな感じ。オープンだけど、ちょっとはにかみ屋で、思慮深い。アルバムの中の1曲「Untitled God Song」では、聖なる存在という概念をこんな風に表現している。「私の神様はステップ踏んで/バッグはコーチのバッタもの/靴もばっちりキメている」

「子供のころは聖歌隊で歌ってた。激しくない、ふつうの教会の聖歌隊よ」というヘンドリックスは、オレゴン州ポートランドの敬虔なフィリピン系アメリカ人の家に育った。実際に会ってみると、会話するときの彼女はややためらいがちで、歌声と同様変わった印象を受けるが、決して力強くはない。「高校1年生のとき、両親が『アメリカン・アイドル』の“歌のレッスン”DVDセットを買ってくれた。1回も見なかったけどね。私が夜中に喚くものだから、両親は耐えかねて、私に歌を習わせようとしたみたい。今でも恨んでるわ」と、彼女はウインクしながら付け加えた。

2年前、ヘンドリックスは音楽の教師を始めた。授業の大半は、子供たちが自信をもって歌えるようにすることに費やされる。「誰だって歌えると思うの」と彼女は言う。「本当にそう思う。必要なのは、忍耐力と、恥をかくことを恐れない勇気だけ。それができない人もいるのよね。良し悪しは分からないけど、私はとにかく歌い続けてきた」



Translated by Akiko Kato

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