韻シスト インタビュー「ヒップホップバンドで韻シストに勝つのは無理」

若い世代からの刺激、そしてShyoudogの変化

─「Bout a hipstory」は、ツアーサポートもしているCRCK/LCKSの小西遼さんが作曲しているというのも大きなトピックだと思うのですが、これはどのような流れで実現したのですか?

TAKU:ベースのShyoudogが最初に提案したんですよ。良くも悪くも経験を積んでいくと、頭が硬くなってしまうことがあるだろうっていう話をみんなでしていて。自分たちで気づかんうちにそうなっている部分もあるやろし。全く違う考え方というか、自分たちが思いつかないアプローチをしつつも、心揺さぶる音楽を作っているのがCRCK/LCKSだったので、「若い世代にプロデュースしてもらう」という意味でも是非お願いしたくて。グルーヴやハーモニーの積み方、サウンドに対する向き合い方も含めて、遼くんから色々吸収できたらいいなと思ったんです。

昔、マイルス・デイヴィスが、当時まだ若造だったマーカス・ミラーをフィーチャーして活動を再開したり、そのマーカスが今度は同じベーシストの後輩ミシェル・ンデゲオチェロにプロデュースを依頼したりっていうのがええなあと思っていて。そうやって自分たちを若返らせるというか、バージョンを刷新するのってストイックやなと。

─BASIさんはどんな感想を持ちましたか?

BASI:正直、自分では把握し切れていない部分がまだありますね。めちゃかっこいいトラックやし、素晴らしいと思うんですけど、今までとあまりにも違うので、アプローチがすごく難しかった。遼ちゃんと1曲やるっていうミッションは達成したけど、この曲がどんな風に育っていくかは未知数というか。

ただ、今までやってなかったことをやるっていうのは、そういうことやと思います。時間が経たないとわからないことだってある。このフォームで、このセオリー通りにやったらこうなるっていうのが、長年やっているとある程度予想できるんですよね。「こういうフォームでスウィングしたら、必ずバットに当たる」みたいな。でもこの曲はそういう曲ではないので。

─そういう得体の知れない曲がアルバムの中に1曲でもあるっていうのはスリリングですよね。

BASI:そうですね。お客さんの反応も含めて今から楽しみです。

─曲作りの面で、ほかに大きなトピックはありますか?

BASI:韻シストっていうと「2MC」というイメージが定着しているけど、今回はかなりShyoudogの役割が増えています。彼のパフォーマンスが前面に出ている気がしますね。レコーディングの時に僕やサッコンのラップを聞いて、Shyoudogはその場で歌のワードを変える。それって相当、難しいと思うんですよ。それまでずっと歌ってきた歌詞を土壇場で変えるっていうことだし。しかも簡単にやるのでビックリしましたね。ハーモニーやコーラスワークもかなり今回は力を入れていて、僕やサッコンのラップ部分にもShyoudogがコーラスを被せたりしています。

─Shyoudogさんの役割が大きくなったのは本作からですか?

BASI:いや、今考えると徐々にそうなってきた感じですね。PUSHIMさんともコラボしたり、「Dear」という曲も、Shyoudogの歌がかなりフィーチャーされていましたし。それがこの『IN-FINITY』で爆発したという感じかな。昔はあんなに酔っ払いでグチャグチャやったのに(笑)。ここに来て開花してる。

TAKU:(笑)。そうですね。メンバーの中で一番、「もういいじゃん! 大丈夫大丈夫」みたいな感じだったのに。かなり詰めのところまでこだわって何度も修正していました。「このキーでもう1回やってみよう」とか、「このコードチェンジも試そう」みたいな。歌詞を変更するだけじゃなくて、アレンジの練り直しなんかも積極的にやっていましたし。Shyoudogのレコーディングへの向かい方が、すごく印象的だったな。

BASI:これも今初めて話すことですけど、僕らもそれにつられて、エンジンをかけ直したっていうのは大きいです。

TAKU:BASIさんもそう思ってたのか!ていう心境です(笑)。

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