TAKUの一言で変わった韻シストの音の流れ
─TAKUさんがストップをかけたのは、なぜだったのでしょう?
TAKU:たとえばアルバムを「1本の木」だと思った時に、枝の広がり方や葉のつき方のバランスが良いものにしたかったんです。一方にだけ枝が伸びていたり、葉が不自然に生い茂ったりしているのではなく、全方位に向かっていくような。今までの韻シストだったら、最初にできあがった曲のムードに乗せられて、「ちょっとくらい偏ってもいいからどんどん作っていこう」っていうノリだったと思うんです。
僕はあとから韻シストに加入したから、どこかファン目線みたいな部分がまだあって。だから、もちろん、そういうノリは大切にしつつ、「いや、俺たちはこういうことも期待されてるし、こういうこともやるべきや」みたいな要素も散りばめたくて。だから、おチャラけてる要素もあれば、ハードでシリアスな楽曲もある、そんな枠を大まかに作ってそこにはめていくような作り方。で、「この枠に入れるべき曲が、まだデモの中にないな」と思ったら、そういう曲を新たに作る。そうやってアルバム作りを進めていきました。
BASI:そうやね。今回はメンバーだけでなく、もちろんリスナーのことも、徳間ジャパンのこともGroovillageのことも、その主宰者のPUSHIMさんのことも、全部加味したうえでのバランスを考えた。そこまで思い至ったのは初めてでした。たとえて言うなら、幕の内弁当を作っている感じというか。「このコーナーには揚げ物がいるな。こっちは焼き鮭。あと何が必要やろ、野菜?」みたいな。これまでずっと、インスピレーションの赴くままに作っていたから、そこの違いはかなり大きかったと思います。
─BASIさんは前作『Another Day』のインタビューで、「音楽やから、わりと流動的だし、何となく始まっていくことも大事だと思うけど、最初にコンセプトを共有することもすごく大事」と話していました。
BASI:それ、おそらく口だけだと思いますね。
一同:(笑)
BASI:今聞いて、「え、そんなこと言うてたんや?」って思いましたもん。でも、今作ではまさにそれを本当に意識的にやっていました。今話したように、メンバーやレーベル、レコード会社のスタッフとイメージを共有して、たどり着く目標をしっかり定めることもメチャクチャ大事で。それってたとえば企業とかだったら当たり前じゃないですか。ともあれ、そうやって作ったものの力強さを、完成した今心から実感していますね。
─TAKUさんが一旦ストップをかけたのは、かなり重要な決断だったのですね。
BASI:ホントそうですね。「時代」と「Don’t Worry」ができた時点で結構僕らはノリノリで、このままのテンションで突き進もうっていう感じだったんですよ。そこに水を差すじゃないですけど、「ちょっといいっすか? 一旦止めて、違う世界に持っていかな」って言うのは勇気がいることだったと思います。
でも、そのTAKUの表情を見た時に、僕らも「これは真剣に話を聞かなアカンな」ってすぐに察した。ここを逃したら、今までと同じような作り方になっていたと思う。あそこで一石投じたTAKUはホンマ大変やったと思う。そんな話、今までしたことなかったけど。