菅田将暉インタビュー「自分にとって音楽は<やり残したもの>という感覚がある」

最新シングル「ロングホープ・フィリア」をリリースする菅田将暉

菅田将暉が仲間とともに音楽を通じて探り続ける、「手応え」の正体とは?

2017年の一年間だけでも主演映画4本、テレビCMでも人気のキャラクターを演じ、大河ドラマにも登場、それと同時に舞台もこなす。……と、文字通りにその姿を見ない日はなかった俳優、菅田将暉。特に寺山修司原作の映画『あゝ、荒野』では日本アカデミー賞を筆頭に日本映画界の主たる映画賞の主演男優賞を多数受賞し、演技力への評価も確実なものにしつつある。そんな彼が、2017年、俳優業と並行して音楽での活動も始めていた。映画『キセキ-あの日のソビト-』で音楽グループGReeeeNのメンバーを演じたことをきっかけに劇中のグループメンバーとして“歌手デビュー”した彼だが、その後、自身の名義でも楽曲をリリースし、ライブツアーも開催した。今回は、彼がこの一年の間に音楽での表現を通じて得た感覚と、8月1日リリースの新曲「ロングホープ・フィリア」について話を聞いた。

ー昨年に出された個人名義のファースト・シングル「見たこともない景色」から一年ですね。菅田さんが音楽を始める際には「どういう“歌手”になるんだろう」と想像した人も多かったように思いますが、2月に行われたライブを拝見すると、菅田さんは“歌手になった”というより“仲間とバンドを組んだ”ということだったのかもしれない、と感じました。

菅田:ツアーは、特にそんな感じでしたね。元をたどれば、映画『何者』劇中のバンドメンバーとして出会った「カラスは真っ白」の元メンバー達と、ただただ純粋に仲良くなり、遊びで練習スタジオに入ったりしていて。それ自体が自分にとってはとても新鮮な時間だったし、プライベートで音楽のものづくりをするのも、初めての体験でした。そうやって遊んでいくうちに、何か形になりそうな雰囲気はあって「いつか何かやれたら面白いねえ」なんて話していたものを、初めての東名阪ツアーとして、僕自身が本当に楽しいと思える形で実現させてもらえたんですね。その点は、ワガママにやらせてもらいました。

ー気の合う、楽しいと思える仲間とともにライブのステージに立ち、菅田さんはどのような想いを抱きましたか?

菅田:みんな忙しいなかで、本当に楽しい時間をつくるのって大変。でも、だからこそ大切にしたいなとも思いました。自分でも誰かのライブはよく観に行くほうですけど、自身であの場に立ってみると「僕はどこかでこれにずっと憧れてきたんだなあ」とも思いましたね。といっても、単純にお客さんがいてワーッと盛り上がっている場に立つということ自体に興味があったわけではなくて……なんだろう、自分らが作ったもので、人々が一つになっている、という景色を見ることですよね。しかも二度と同じことができない。そういうことに憧れを持っていたんだなって。

ー俳優業やテレビ番組に出演することとの違いは明確にありましたか?

菅田:やっぱりどうしたって、俳優の演技とそれを観る方々には距離があって……まあ、それでいいとは思うんです。でも正直なところ、今の時代それだけだといろんな誤解が生まれやすいし面倒なこともたくさん起こる、という自分の葛藤もありました。だったら、たまにでもいいから、自分の姿と言葉と汗みたいなものをその場で見てもらえる機会を作ったほうが、一番こっちが何かを伝えたいときにもきっと伝わるんじゃないかなあ、と。仕事でも何でもそうだけど、やっぱり、間に何かを介すとダメです。可能な限り、直接会って喋らないと。特に今はデジタルなものが普及しまくっているからこそ、そういう人肌のものが少しでも残っていないと、僕らがいる意味がないような気もしていて……。

ーいま「僕ら」とおっしゃったのは、俳優としての菅田さん、ということも含めてですか?

菅田:そうですね。たとえば、まだ映画そのものは無くならなそうではあるけど、製作費だって減っていったり、テレビを観ない人も増えていたり、雑誌もどんどん無くなっていって。だからこそ、自分たちの手で作ったものを少しでも増やして、そのまま届けたかったのかもしれないです。いま思い返せば、ですけどね。

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