モーゼス・サムニーが語る神秘的サウンドのルーツ、サンダーキャットとの出会い

―少し話は戻りますけど、モッキーとはどんなきっかけで知り合ったんですか?

モーゼス:リアン・ラ・ハヴァスの紹介だよ、彼女とはもともと友達なんだ。モッキーの奥さんがDesirée Kleinというファッションブランドをやってるんだけど、リアンがLAにいるときに「あそこのトラウザーを買うから車で連れて行って」と言われて、彼女を乗せてブランドのスタジオに行ったら、そこにたまたまモッキーがいてね。彼はベルリンからLAに引っ越したばかりだったから、LAを案内することになって。それで「僕のギグにきなよ、今度一緒に音楽やろう」となって、それで友達になったんだ。

―サンダーキャットとはどのように?

モーゼス:2013年にLAに引っ越したとき、彼の前座をやったんだ。その時はエージェントを介しての仕事だったんだけど、その数週間後、LAのサンセット通りを車で移動してたら、隣の車から「ヘイ、モーゼス! 番号教えろよ!」ってサンダーキャットに呼びかけられてね。それで窓ごしに電話番号を伝えたんだ(笑)。それからしばらくしてメールが届いたんだよ。

―サンダーキャットとのレコーディングはどうでしたか?

モーゼス:事前に「Lonely World」のデモを送っていたんだけど、スタジオで彼に聞いたら「いやー、何それ?」って言うから、どうしようかなと思ってさ(笑)。でも、「いいからとりあえず聞かせてくれよ」って言うから、その場でデモを流したら、即興でベースを弾いてくれてね。その一発目のテイクをアルバムに使ってるよ。



―あなたはポストプロダクションで作り込むのと同時に、インプロヴィゼーション的な部分でもセンスがありますよね。その辺りはサンダーキャットとも通じるものなのでは?

モーゼス:そう、両方のミクスチャーを意識している。それを僕は「コントロールド・フリーダム(統制された自由)」って呼んでいるんだけど(笑)。

―ちなみに、なんでサンダーキャットと一緒にやろうと?

モーゼス:彼のクレイジーなベースが単純に好きなんだよ。他のベーシストの演奏も聞いてみたんけど、全然良くなかったし気に入らなくてね。このアルバムでは「Quarrel」と「Lonely World」の2曲しかベースは入ってなくて、その両方でサンダーキャットが弾いてる。サンダーキャットのベースしか入ってないんだ。

Twitterで東京のタクシー運転手とのエピソードを投稿されてましたが、ベースにこだわりがある?

モーゼス:あれね(笑)。僕の出で立ちを見て「何をやってる人?」って聞くから「ミュージシャンだ」って言ったら、「マーカス・ミラーはジャコ・パストリアスより上手いと思う」って力説されたんだ。僕はマーカス・ミラーのことは全然知らないんだけど、とりあえず「あー、そうだね」って答えておいた(笑)。タクシー運転手がそういう話をしてきたのは面白かったな。しかも英語でさ。

―さすがにそんな運転手は珍しいですけどね(笑)。

モーゼス:ジャコは僕も好きだし、彼が参加したジョニ・ミッチェルのアルバム(76年の『逃避行』)なんかは大好きだよ。ただ僕自身、低音域に惹かれる部分があるのは確かだけど、ベースについてはまだまだ初心者なんだ。今回のアルバムでも2曲しか入れてないし、まだ足を踏み入れたばかりの領域って感じだね。これから勉強しなきゃ。

―自分の中で一番こだわりのある楽器は?

モーゼス:ハープだね。このアルバムでも「Quarrel」で使っている。それとチェロかな。もちろん自分では弾けないんだけど、その二つは大好き。

―ハープが好きなのはなぜ?

モーゼス:だって、エンジェルみたいな響きだからさ(笑)。


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