ガービッジのシャーリー・マンソン、自傷や鬱について吐露したエッセイを公開

エッセイを公開したシャーリー・マンソン(Photo by Slavko Sereda / Shutterstock.com)

ガービッジのシンガー、シャーリー・マンソンは思春期に鬱状態に苦悩した様子、それが高じて自傷行為を行うようになった様子をニューヨーク・タイムズ誌に寄稿した。彼女はそこで、「自分で自分に負わせた精神的苦悩は極端なもので、意識の半分は自分ではなかった」と綴っている。

マンソンのエッセイは、精神的な虐待が伴う恋愛をしていた10代後半の自分自身の描写から始まる。自尊心の低さが悩みの種だったマンソンは、ペンナイフで自傷行為を始めた。このペンナイフ、もともとは彼女が買ったブーツに飾りとして付いていたものだった。初めて切り傷をつけたのは、当時の彼氏とケンカしたあとだと言う。

「突然、今自分が置かれているこんな馬鹿げた状況よりも、もっと大きな何かの一部だと感じた」と、マンソンは述べている。「心の中で、あっという間に自分の人生がもっと大きなものになり、広がりを見せた。私は救われたのだ。(中略)私には敵がいた。ナイフもあった。そして未来は自分のものだった」。

マンソンはその感覚を維持しようとし、自傷の度合いは悪化していった。「自傷行為に耽ることを選ぶと、徐々に切り方が上手くなり、効果的なやり方を見つける」と彼女。「定期的に自分を傷つけるようになった。切り傷が深くなった。ストッキングで傷を隠し、このことは絶対に誰にも打ち明けなかった」。

彼女が自傷をやめたのは、「最高のコミュニケーション能力を持つ愛情深く、尊敬できる人物」と知り合ったときだ。しかし、数年後、ガービッジが2枚目のアルバムをリリースした頃、彼女の内側で自傷行為への誘惑が頭をもたげ始めた。これは1998年の『ヴァージョン2.0』の頃で、自分の外見や行動を常にメディアに監視されていると感じるようになり、彼女が言うところの「インポスターシンドローム」(※達成した成功が自分の実力によるものでないと考えること)に陥っていたと言う。「自分で自分に負わせた精神的苦悩は極端なもので、意識の半分は自分ではなかった」と書いている。そして、「ヒステリックで、感情の高ぶりが異常なとき、小さなナイフの上にこの手を置けば、落ち着きを取り戻して、このストレスに対処できると思ったものだ」と続く。

マンソンはこの誘惑に打ち勝つことができたと書いている。二度と自分を傷つける行為をしたくなかったからだと言う。「今でもかつての思考パターンに陥らないように用心している」とマンソン。ダークサイドに陥ってしまわないように、自分自身にも他人にも優しくし、クリエイティヴさを忘れずに、幸せを求め続けているらしい。そして、1998年当時の自分の気持ちと対比させながら、「自分の見た目ではなく、自分の中身が重要だと思っている。私たちが生きている混沌としたこの世界では、どんな生き方を選択するのかが本当に重要だ」と述べている。また、力を引き出したいときの特効薬として、マンソンはスタンリー・クニッツの詩「The Layers」を挙げている。

自傷行為で悩んでいる人はS.A.F.E. Alternatives infoライン(1-800-DONTCUT)に電話して相談するか、SelfInjury.comを見てみよう。(※編注:日本では「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)などがある)

マンソンのエッセイ掲載は『ヴァージョン2.0』のリイシューと時期を同じにしている。このリイシュー盤にはボーナス・ディスクにB面曲が10曲収録されている。あるコメントで、マンソンはこのアルバムを「ガービッジらしいレコード」と呼んでいた。また、ドラマー兼プロデューサーのブッチ・ヴィッグはこれを「バンドのベストアルバムの可能性が高い」と言っていた。(※編注:『ヴァージョン2.0』20周年を期に、制作秘話を明かすコメンタリー映像が公開中

Translated by Miki Nakayama

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