複雑な脚本と演者の熱演が噛み合ったサスペンス「去年の冬、きみと別れ」の魅力を考察

(C)2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

EXILE、三代目J Soul Brothersの岩田剛典が主演を務め、山本美月、斎藤工、北村一輝という豪華キャストによるサスペンス映画「去年の冬、きみと別れ」。劇場でも好評だった本作が、いよいよBlu-ray/DVDで発売される。あらためて本作の魅力をお届けする。

観終わった後、しばらく呆然としてしまった。

美しい文体により張り巡らされた伏線と、後半に訪れる予想もしなかった展開、そして衝撃のラスト。全国の書店員をして、「この小説は化け物だ」とまで言わしめた芥川賞作家・中村文則による『去年の冬、きみと別れ』。手紙や証言などを用いた“小説ならでは”のトリックが随所に散りばめられ、「映像化は難しいだろう」と言われたこのサスペンス小説を、大胆な脚色を加えつつ「愛と憎しみ」というテーマによって見事に再現したのが、2018年3月に公開され話題となった同名映画だ。


(C)2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

本作を、「謎めいた天才カメラマンと、彼の恐るべき疑惑に迫る記者によるサスペンス」、あるいは「イケメン俳優・岩田剛典と今をときめく女優・山本美月による美しいラブストーリー」と思って観始めると、その予想外の展開に驚くかも知れない。物語は、1人の盲目の女性が撮影スタジオで焼け死んでいくショッキングなシーンから始まる。その様子を恐怖とも、恍惚とも取れる表情で見つめていたのが斎藤工扮するカメラマン・木原坂雄大だ。一度は「監禁」と「殺人罪」の容疑で逮捕された雄大だが、彼を溺愛する姉・朱里(浅見れいな)の尽力により「保護責任者遺棄致死罪」として懲役3年、執行猶予5年という異例な判決がなされた。

果たしてこれは、「事件」なのか「事故」なのか。謎に満ちた木原坂の真実を暴くため、彼への取材を始めたのが耶雲恭介(岩田剛典)。レストランで働く婚約者、松田百合子(山本美月)との結婚を控える彼にとって雄大への取材は、「独身前の最後の無謀な冒険」として最適だったのだ。


(C)2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

前半は、とにかく斎藤の怪演をたっぷり堪能できる。あのハンニバル・レクター博士がお気に入りでもあった、バッハ作曲の「ゴルトベルク変奏曲」を自宅スタジオで流しながら、瞳孔の開いた狂気の眼差しでモデルを撮影する姿には、思わず身震いしてしまう。

「人が燃えた時の炎の色が、どれだけ美しいか」

取材に訪れた恭介に向かってそう言い放つ雄大の表情は、精密な「地獄絵図」を描くため、溺愛する我が娘の焼け死ぬ姿を見据える『地獄変』の主人公、良秀とオーバーラップする。芥川龍之介によるこの小説は、雄大の愛読書だ。



(C)2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

不気味だがカリスマ的な魅力も持ち合わせ、次第に恭介の婚約者・百合子に近づく雄大。能楽を観劇する恭介と百合子を、まるで獲物を狙う肉食動物のように、少し離れた席から彼が見つめるシーンは、リドリー・スコット監督作『ハンニバル』のオペラ観劇シーンを彷彿とさせる。


(C)2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

果たして恭介は、雄大の毒牙から百合子を守り、「真実」をつかむ事が出来るのだろうか。

ところが物語は、途中から予想もしない方向へと進んでいく。恭介が企画を持ち込む出版社のベテラン編集者、小林良樹(北村一輝)は実は朱里の愛人であり、雄大のことも幼い頃からよく知っていた。雄大と朱里の父親は、彼らが子供の頃に何者かによって殺されているが、その事件の「秘密」を共有しているのも、どうやら雄大、朱里そして良樹の3人のようだ。


(C)2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

おぞましい過去が、次第に明るみになる中、恐れていた「最悪の出来事」が起きてしまう。恭介の行動に不信感を抱き始めた良樹は、彼の故郷である金沢へと飛ぶ。そこで良樹が見つけたものは、雄大と恭介の意外な因果関係だった。

追う者が追われ、追われていたはずの者が、巧妙な罠を仕掛けたハンターに。次に一体何が起こるのか、全く分からなくなるほど二転三転していくストーリーに、気づけばズブズブと引き込まれていく。

誰が誰に仕掛けた復讐劇だったのか。本当の「バケモノ」は、一体誰だったのか。最後の最後まで一瞬たりとも目が離せない。

悲しい過去を持つ恭介を、山本や斎藤、北村など実力派の役者たちに囲まれながら、見事に演じきった岩田も印象的だった。EXILE、三代目J Soul Brothersではまず見せないような、影のある表情。その理由を知った時、この映画は忘れ難いものになるだろう。


『去年の冬、きみと別れ』
出演:岩田剛典 山本美月 斎藤 工・浅見れいな、土村 芳/北村一輝
監督:瀧本智行、脚本:大石哲也、音楽:上野耕路、原作:中村文則『去年の冬、きみと別れ』(幻冬舎文庫)
主題歌:m-flo 「never」(rhythm zone / LDH MUSIC)
http://wwws.warnerbros.co.jp/fuyu-kimi/


2018年7月18日(水)ブルーレイ&DVD 発売・レンタル開始/デジタルレンタル配信開始
【初回仕様】 ブルーレイ プレミアム・エディション(2枚組)¥6,990+税
【初回仕様】 DVDプレミアム・エディション(2枚組)¥5,990+税
【初回仕様】 ブルーレイ ¥4,990+税
【初回仕様】 DVD ¥3,990+税



【映像特典 収録内容】
<プレミアム・エディション>
撮り下ろし!今だから語れる、岩田剛典<公開後>単独インタビュー
メイキング・オブ 『冬きみ』~撮影日誌~
未公開映像集
イベント映像集 
  完成披露試写会舞台挨拶
  公開直前!岩田剛典誕生日サプライズイベント:舞台挨拶&舞台裏映像も!
  初日舞台挨拶 <マスコミ取材回>
本編をご覧になった皆様へ
 ~ジャパンプレミア上映後:岩田剛典舞台挨拶~
劇場予告編・TVスポット集

【封入特典】
<プレミアム・エディション>
ブックレット/特製大判ポストカードセット(3枚組)/木原坂雄大フォトカード/蝶ステッカー

<通常版>
蝶ステッカー


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